第156話 中継地点・レドンの町

 レドンの町には夕暮れ時に到着。

 ここは砂漠地帯と他国を結ぶ中継地点とも呼べる町で、国籍や種族は見事なまでにバラバラだ。その影響もあってか、町全体が異国情緒であふれている。


「今までとはちょっと雰囲気が違う町ね」

「本当ですわね」


 キアラとシャーロットもその空気を感じ取ったらしい。

 他のメンバーも興味深げに町の様子を眺めていた。


 とはいえ、いつまでも観察しているわけにもいかない。とりあえず、今日泊まる宿を確保しなくては。

 各国を結ぶ大きな道の真ん中にあるため、ここには多くの商人たちが訪れている。そのため、宿屋の数も多く、寝る場所がなくて困る心配はなさそうだ。

 ただ、今回はアウドラの時ように、みんなが一緒に泊まれるような大きい部屋は確保できなかった。そもそも、あれはエクブルームさんの厚意で泊まれた、いわばイレギュラー的な部屋だったからな。

そのため、三人部屋をふたつとひとり部屋をひとつという組み合わせで取ることに。

 もちろん、ひとり部屋は俺で、女子六人がそれぞれ三人ずつに分かれる。

 振り分けは――


 マルティナ、ハノン、シャーロット。

 キアラ、シモーネ、アイリア。


 という感じ。

 今日は移動に時間を費やしたこともあり、みんなヘトヘトに疲れ切っていた。

 なので、食事は宿に併設している食堂で済ませると、明日に備えて就寝することとなったのだった。


「じゃあ、お休み」


 みんなに就寝前の挨拶を済ませると、俺は部屋へと向かう。

 ちなみに、ひとり部屋は一階にあって、他のメンバーの部屋は二階にある。こっちは商人が多く、二階は他国のダンジョンに挑戦するつもりの冒険者パーティーが多いという印象だ。


「えぇっと……部屋番号は――あった。ここだ」


 フロントでもらった鍵に刻まれたものと同じ数が書かれたプレートのある部屋の前まで来る――と、


「……うん?」


 何か、視線を感じた。

 誰かに見られている……?


 宿屋といえば、アウドラではアイリアに狙われたんだったな。あの時は迂闊な行動で危うく窮地に立つところだったけど……もしかして、今回も誰かが俺を?


「気のせい――だと思いたいんだけど」


 俺は念のため、竜樹の剣に魔力を込めた。

 それから、剣先をそっと床につけると、魔力によって生みだされた植物の蔓がドアの隙間から部屋の内部に侵入し、中の様子をうかがう。竜樹の剣を通して、室内の状況が伝えられるが、それによると、


「異常なし、か」


 どうやら、気のせいだったようだ。

 俺は安堵して室内へと足を踏み入れる。


「おっ? いい部屋じゃないか」


 中は思っていたよりもずっと広く、家具も充実している。おまけに、センスのいい花瓶には美しい赤い花が一輪だけ生けてあり、これもまた部屋の格式を上げている。これであの値段なら、だいぶリーズナブルだな。


「今日はもう寝ようか」


 安心した途端、急に眠気が襲ってきた。

 俺はベッドへ横になると、そのまま目蓋を閉じて寝入る。



 ――どれだけの時間が経っただろう。

 夜中に、ふと重みを感じて目が覚めた。


「えっ!?」


 目を開けると、そこには驚きの光景が。


「ハ、ハノン!?」


 初めて会った時のように、ハノンが俺にのしかかっていた。

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