第154話 砂漠の村へ
大陸東端にある砂漠といえば、レーム砂漠のことだ。
ゲーム内でも存在している場所ではあるが、イベントで訪れる以外、特に足を運ぶ必要がないから、一般ユーザーからすると印象が薄い。
まあ、元々あのゲームって「ファンタジー世界で農業しようぜ!」っていうのがコンセプトなわけだから、作物を育てられない砂漠に用はないんだよね。
……とは言うものの、公式チート枠でダンジョン農場があるんだから、砂漠でもできそうなものだよな。土壌そのものを変えられる竜樹の剣ならば可能だろう。
イゾロフさんの話では、俺たちが向かう村はオアシスを中心に発展してきたらしいから農業用水に困らないというプラス要素もあるしね。
「砂漠かぁ……何を持っていったらいいのかしら」
「飲み物は必須ですよね!」
「でしたら、冷気を放つ魔鉱石を砕いて常に冷やしておかないといけませんわね」
「食べ物はどうするんじゃ?」
「現地調達は難しそうだよねぇ」
「なら、お弁当を作りましょうかぁ」
毎回恒例になっている、遠足前のような空気。
嵐の谷を攻略する際も思ったけど……緊張感がない。――だが、それがいい。それがうちの強みでもあるんだ。
緊張感も強すぎると動きが鈍くなったり、判断力が低下するマイナス要素の方が目立ってくるからな。
今回もまた馬車での移動となる。
ただ、恐らく過去最長の移動距離となりそうだ。
「うーむ……どこかで一度休憩をとった方がよさそうかな」
「一泊するの?」
地図とにらめっこしている俺のもとへやってきたのはキアラだった。
「思っていたよりも移動距離があるんだ。一日で到着するのは難しいかもな」
ゲームならマップ上でキャラを操作し、わずか数秒で移動できる。
だが、当然この世界ではそのような方法を使えるわけがない。自分たちの足で移動しなければならないとなったら、いろいろと考えないとな。
「そうなると、肝心なのは宿泊する町だけど――あっ」
候補地を探していると、ある町が目に留まる。
それはこのダンジョンと目的地の中間地点にあり、尚且つ、規模を見る限りドリーセンの町以上に発展しているようだ。ここならいろんな店があるから、あとになって必要だと分かったアイテムも調達できるだろう。
「一泊するなら、このレドンの町が候補に挙がるかな」
「レドンの町?」
その名を聞いて反応を示したのは新加入のアイリアだった。
「行ったことがあるのか、アイリア」
「いや、そういうわけじゃないんだけどさ……なんだろう。どっかで聞いたことがあるんだよねぇ」
アイリアは何度も首を傾げながら思い出そうとする――が、残念ながら明確に「これだ!」と言える理由は見つからなかった。
「なんだかスッキリしないのぅ」
「でも、悪いことじゃないんですよね?」
「うん。そんなんじゃないよ」
マルティナからの質問にそう答えるアイリア。
まあ、本当にどうしようもないほど危険な場所だというならさすがに覚えているだろうし、問題はないかな。
それに、ここ以外の町となるとほとんど候補はなくなってしまう。
こうした理由から、俺たちはレドンの町を目指すことにした。
「よし! じゃあ、そろそろ出発しようか」
「「「「「「おおー!」」」」」」
いざ、農業へ取り組もうとする砂漠の村へ。
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