第144話 遭遇
ついにたどり着いた崖のてっぺん。
しかし、そこにあったのは放置されていた畑と無人の小屋のみ。さらに調査を進めようとした俺たちの前に――とうとう噂のヤツが現れた。
「こいつが……噂の巨大怪鳥か……!」
嵐の谷に住み着いているとされる、巨大な鳥型モンスター。
ここへ姿を見せたということは、ここに巣でも作っているのだろうか。周辺にそのようなものは見受けられないが、俺たちがこの場へたどり着いてから現れたところを見るとここから排除することが目的だと思われた。
いずれにせよ、戦闘は避けられない状況だろう。
しばらくの間、にらみ合いが続いて――先に動きだしたのはモンスターの方だった。
「キイイイイイッ!」
大きな翼を広げた怪鳥は、そのままバサバサと羽ばたきをする。それによって生みだされた強風が俺たちを襲った。
「うおっ!?」
「きゃあっ!?」
「っ! マルティナ!」
吹き飛ばされそうになったマルティナの腕を掴み、なんとかこちらへと引き寄せる。他のみんなは、周囲にあった木や岩にしがみついてなんとかやり過ごそうとしていた。
しかし、怪鳥が攻撃の手を緩める様子はない。
俺たちが力尽き、この崖から地上へと落ちるまで、この強風が止むことはないだろう。
「くそっ……」
竜樹の剣の力で蔓を生みだし、それで敵モンスターの動きを封じるという作戦を思いついたが、これほど強い風が吹き荒れている中ではそれも叶わない。同様に、キアラとシャーロットも魔法でなんとか対抗しようとするが、それを実行する隙がまったくなかったのだ。
……こうなったら、頼りになるのは彼女だけだ。
「シモーネ!」
「はい!」
俺が名前を呼ぶと同時に駆けだす辺り、最初からあのモンスターと戦うつもりでいたのかもしれない。昔に比べ、いい意味で好戦的になったな、シモーネは。
そのシモーネはドラゴン形態へと姿へ変え、巨大怪鳥の前に立ちふさがる。さすがにあれだけの巨体ならば、ヤツの羽ばたきによる突風もまったく意味をなさない。
「グオオオオオオオッ!」
雄々しい雄叫びとともに、シモーネは牙を向けて食らいつこうとする。
さすがに身の危険を感じたのか、怪鳥は羽ばたきをやめて空へと舞い上がった。
――が、撤退をしたわけではないようで、その場からは離れず、機を窺うように俺たちの頭上を旋回していた。
「まさか……まだ戦う気でいるのか?」
相手はドラゴンだぞ?
いくらヤツが巨体であったとしても、今のシモーネはそれに匹敵するサイズだし、それ以外に勝る点はひとつもない。普通なら逃げだしてもおかしくはないのだが……やはり、あのモンスターにとって、ここは特別な場所らしいな。
「とはいえ、モンスターがこの場所にあそこまでこだわる理由って……なんなんだ?」
「ハリケーン・ガーリックがエサで、それを守ろうとしているとか?」
「う~ん……」
アイリアの意見には、さすがに少し無理があるだろう。
あそこにあるハリケーン・ガーリックは、明らかに自生したものではない。人の手によって作られたものだ。
シモーネに上空を牽制してもらいつつ、その答えに迫るものがないか、周辺を可能な限り調べてみることにしよう。
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