第142話 シモーネ、飛翔
アリシアが思いついたという名案。
それは――
「ドラゴン形態になったシモーネの背中に乗って、上空からあの場所を目指す!」
というものだった。
「なるほど。確かにそれならまだ可能性はありそうだ」
まったくもって見当違いというわけではないと思うし、俺としてもそれに近い考えは持っていた。
それを実行に移すため、キアラとシャーロットのふたりに周辺を探知魔法で探ってもらい、シモーネを妨害した《目に見えない壁》がない場所まで移動する。しばらく坂を下っていると、
「! ここで魔力が途切れているわね」
「ここからなら上空へ舞い上がれるはずですわ」
ふたりが示したポイントはまったく同じ。
それを確認してから、再びシモーネにドラゴン形態となってもらい、俺たちはその背中へと飛び乗った。
「あうぅ~……」
そのシモーネは、さっきの頭部への一撃が脳裏にこびりついているようで、舞い上がることに対して少し恐怖心を抱いているようだった。
俺はそんなシモーネを安心させるため、乗り込んだ背中を撫でながら話をする。
「大丈夫だよ、シモーネ。今度はキアラとシャーロットのお墨付き――きっと飛べるはずだ」
「ベ、ベイルさん……」
背中を伝う震えが止まり、シモーネの瞳がキッと鋭さを増す。……人間形態の姿を知っているとはいえ、今のドラゴン形態は本当に迫力があるな。以前、屈強な大男たちが、ドラゴン形態のシモーネを見て逃げだしたことがあるけど、改めてその時の彼らの気持ちが理解できた。
「では、飛びます! みなさん、落ちないように気をつけてください!」
覚悟を決めたシモーネは、大きく翼を広げ――舞い上がった。
「! よし! さっきより高い位置まで上昇できているぞ!」
キアラとシャーロットの見立て通り、ここにはシモーネを邪魔する壁は存在していなかった。とはいえ、まだ油断はできない。ここまでは上昇できても、崖のてっぺんまでそれが通じているとは限らないのだ。それに、てっぺんの周囲だけまた別の結界があるという可能性もある。
そんな不安を感じつつ、ふたりは引き続き探知魔法で辺りを探る。シモーネはその結果が出るまで待機したり、ゆっくりと上昇したりと慎重な動きを見せた。
スローペースでも着実に進んでいくと、
「もうちょっとでてっぺんに出ますよ!」
叫ぶマルティナ。
その言葉通り、あと少しで崖を越えられる。
そして――とうとうてっぺんへとたどり着いた。
「この辺りに結界魔法は張られていないわ。シモーネ、安心しておりていいわよ」
「分かりました」
キアラから最後の分析結果を耳にしたシモーネは、ゆっくりと着地。
そこは、想像よりずっと広い場所だった。
「こ、ここにハリケーン・ガーリックがあるのか……」
てっきり、もっとこう……草木が生い茂っている場所をイメージしていたのだが、そこはどちらかというと荒野って感じだ。とてもじゃないが、野菜が自生しているようには思えない。
ただ、情報では間違いなくここだ。
とりあえず、手分けして辺りを調査してみることにしたのだが、
「!? あ、あれって!?」
そんな俺たちの目の前に、信じられない光景が飛び込んできた。
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