第141話 深まる謎

 ドラゴン形態となり、舞い上がろうとしたシモーネであったが、まるで天井に頭を打ちつけたかのように止まってしまい、ついには人間形態となって地上へと落ちてきた。


 なんとかギリギリのところで救出できたけど……


「一体、何があったんだ?」

「……どうやら、上にもトラップが仕掛けられておるようじゃな」


 気絶しているシモーネを膝枕で介抱しているハノンが言う。

 やっぱりそうなのか……だとすると、完全に手詰まりとなってしまった。


「地上からは終わらない道……上空からは見えない壁……どうしたらこのトラップを突破できるんだ?」


 問題はそこだ。

 とりあえず、このトラップは魔力絡みであることから、まずはキアラとシャーロットに分析を依頼。冒険者であるマルティナは何か手がかりがないかと周辺を調べ始め、アイリアはその手伝いをしている。


 一方、俺はというと、


「うーん……」


 竜樹の剣を地面に突き刺し、地中から何かヒントを得ようとしていた。

 ――が、


「ダメだ。何も分からない……」


 わずかでもいいから、突破につながりそうな手がかりを求めていたのだが……それすらまったく掴めず、こちらは完全に行き詰まる。

 それはマルティナとアイリアも同じようで、ふたりとも疲弊しきった顔をしながら戻ってきた。


 残すはキアラとシャーロットのふたりだが――


「魔法が使用されていることは間違いなさそうだけど……打ち破るにはどうしたらいいのか、その方法が見当たらないわ」

「よほど腕の立つ方が仕掛けたようですが……」


 とりあえず、魔法によるものであることは発覚したようだが、肝心の突破方法に関しては見当もつかないという。


「くそぉ……あとちょっとだっていうのに……」


 すぐ目の前に、目的のハリケーン・ガーリックがある。

 だが、そこは正体不明の魔法によって近づけないようになっていた。


 一体、どこの魔法使いがこのようなことを……


「まさか……」


 ふと脳裏に浮かんだのは――霧の魔女だ。

 かつて、キアラとシャーロットが通う学園をにちょっかいをかけてきたあの霧の魔女ならば、このようなトラップを仕掛けるのは容易いはず。おまけに、この先にあるのは風属性の魔法使いにとって有効なアイテム。


 仮に、霧の魔女自身が風属性だったとしたなら、ハリケーン・ガーリックを独占したいと思うかもしれない。


 俺はその可能性について尋ねてみたが、


「「うーん……」」


 キアラとシャーロットの反応は鈍かった。


「霧の魔女の可能性がまったくないわけじゃないけど……たぶん、あの魔女ならもっとこっちがドン引きするくらいの強力な結界を張ると思うのよねぇ」

「わたくしも同意見ですわ」

「それにこの結界……かなり古い時代に張られたものみたいなの」


 なるほど。

 突破は難しいが、霧の魔女が仕掛けたものだとするとより絶望感が増す仕上がりになるというわけか。それにプラスして、使用されたのはずっと昔だという。


 となると……誰が仕掛けたんだ?

 また謎が増える一方で、


「あっ!」


 突然、アイリアが叫んだ。


「ど、どうしたんだ?」

「この窮地を突破する、いいアイディアが浮かんだんだよ!」


 煌めく笑顔でそう訴えるアイリア。

 一体、何を思いついたっていうんだ?

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