第137話 たどり着いた場所
俺たちが訪れた嵐の谷は、噂通り強風が吹き荒れる危険な場所だった。
しかし、この場所に何度も来ているというアイリアのヒントから、ここの攻略法が【ファンタジー・ファーム・ストーリー】とまったく同じであることに気がつく。
……って、そうだよな。
ここはそのゲームの中の世界なんだ。
これまでも、そこからの情報をヒントにいろいろと攻略してきたじゃないか。今手にしている竜樹の剣だってそのひとつだ。
というわけで、俺は記憶を頼りに歩いていく――と、さすがにまずいので、ここは素直にアイリアの案内通りに進んで行くとしよう。
「こっちだよ」
先頭を行くアイリアは得意げに進んでいく。
やがて、俺たちの目の前に岩壁が現れた。
「君たちが持ってきた地図に描かれているハリケーン・ガーリックがあるという場所は、あの坂を上っていった先にあるよ」
アイリアは崖をのぼっていくように伸びる坂道を指さしながら言う。
「この先か……」
これもまた実際のゲーム通り。
さっきまで一歩間違えたら体ごと吹き飛ばされそうになりそうなほどの強風が吹き荒れていたのだが、ここまでたどり着けばほとんどのその影響は受けない。こっちもゲーム通りだな。
「しかし……」
見上げると、先の方はまったく見えない。かなり高い崖のようだ。ゲームのキャラクターならまだしも、実際に自分自身でこれをのぼっていくとなると、かなり体力を消耗しそうだ。
「てっぺんまで向かうとなると相当な時間と体力が必要になる……念のため、テントを持ってきてよかったな」
「時間がかかるようでしたら、これで夜を過ごせますしね」
マルティナの言う通り、シモーネが背負っているリュックには、大型のテントが入っている。折り畳み式とはいえ、かなり重量があるのだが、そこは竜人族であるシモーネのパワー。まったく問題にしていない。本当に頼れるな。
「そうと決まれば、早速あの坂道へいきますわよ!」
意気揚々と歩きだしたシャーロット――だが、
「あっ、ちょっと待ってくれ」
俺はそんな彼女を呼び止めた。
「どうかされました?」
「ここから先は迂闊に行動せず、慎重に進んで行かないと。どこにモンスターが潜んでいるか、分からないからね」
「そ、そうでしたわね」
目的地に近づいたことでテンションが高まっていたシャーロットだが、俺の「モンスターが出る」という言葉を聞いて気を引き締めたようだ。
「私たちも気合を入れていきましょう!」
「……それはそうだけど、声のボリュームはもうちょっと下げて」
「はい! 気をつけます!」
マルティナの気合に押され気味のキアラ。
ハノンとシモーネのコンビも、崖の先端を見上げながら何事か話し合っている。
その様子を眺めていたアイリアが、
「凄いな……みんな……」
ボソッとそんなことを呟く。
「なかなか頼りになるメンバーだよ」
「そ、そうみたいだね」
俺が声をかけると、アイリアは我に返って頷く。
……なんとなくだけど、その眼差しは普段より輝いているように見えた。
今回の件が終わったら――正式にファームの一員として誘ってみようかな。
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