第136話 嵐の谷の攻略法
あくどい冒険者たちに騙される直前で、その道から戻ることがアイリア。
そのアイリアだけど――
「俺たちと一緒に来ないか?」
悪党たちが騎士団によって連行されていく光景を見送った後、俺はアイリアに向かってそう提案した。
彼女は魔法使いを目指して修行を積んでいたそうだが、それはすべて独学によるものであり、知識は拾い集めた魔法の書から得ているという。だから、俺にかけた拘束魔法も威力はいまひとつだったのだ。
そこで、キアラは自身が通っている魔法学園に入学してみてはどうかとこっそり俺に話していたのだ。そのことも伝えたら、
「ほ、本当に……?」
アイリアはポカンと口を開けながら、そう言った。
なんというか、信じられない現象を目の当たりにした子どもみたいな――そんなリアクションだった。
さらに、俺たちは嵐の谷へ向かい、ハリケーン・ガーリックを手に入れるためにこのアウドラの町へやってきたことも教える。
「嵐の谷? それなら詳しいよ、僕」
「本当か!?」
「あの谷にはよく行くんだ」
「よく行くって……モンスターもいるんでしょ?」
「モンスター?」
アイリアはカクンと首を傾げる。
あ、あれ?
なんだか情報と違うな……ハリケーン・ガーリックを入手する際には、そのモンスターこと巨大怪鳥は避けて通れないくらいの存在だったはず。実際、【ファンタジー・ファーム・ストーリー】でも、そのモンスターとはイベント戦闘があった。つまり、ほぼ確実に怪鳥とは戦うことになるのだ。
それにもかかわらず、毎日のように嵐の谷へ行くというアイリアは、モンスターの姿を認識していない。
これは一体どういうことだろうか。
「……行ってみれば分かるか」
俺たちは新たにアイリアを加えて、問題の嵐の谷へ向かった。
嵐の谷へ近づけば近づくほど、強風が俺たちを襲う。
「こ、これは……想定以上だな」
「でも、まだまだ序盤ですよ」
マルティナの言う通り、地図によればまだ序盤も序盤の位置。ここからさらに険しい道のりが待っているのだ。
正直、これ以上前進できるか怪しいところだったが、
「こっちだよ! あとちょっとだから!」
案内役を買って出てくれたアイリアが、俺たちをある場所へと先導する。まだハリケーン・ガーリックのあるとされる場所はまだまだ先だが、まるでもうちょっとでゴールだと言わんばかりだ。
――それは、半分当たっていた。
「あれ?」
ある地点にたどり着いた時、突然強風が止んだ。
「えっ? どうなっているんだ?」
「まるで風が消え去ったようじゃな」
「不思議ですぅ」
ハノンとシモーネも、いきなりの環境変化に戸惑っていた。
一方、ここまで案内してくれたアイリアは得意げに語る。
「世間じゃ嵐の谷と言われてあまり人が入り込んでこないけど、ここはある決められたルートを通ると風の影響をまったく受けなくて済むんだ」
「そ、そうだったのか……」
……思い出した。
ゲーム内での嵐の谷の攻略方法がまさにそれだ。
なんで今まで忘れていたんだよ……だとしたら、
「次は西へ進めばいいんだな」
「!? なんで分かったんだ!?」
ゲーム内の情報を口にすると、アイリアは驚きに目を丸くしていた。
まずいと思ってすぐに「ただの勘だよ」と誤魔化したけど……気をつけないといけないな。
ただ、そうと分かれば問題なく進める。
あとは怪鳥の存在がどう影響してくるか、だな。
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