第134話 謎の少女アイリア
アイリアから話を聞いているうちに夜明けが近づいてきたため、俺たちは睡眠を取ろうと寝室へ。
「わ、わあぁ……こんなベッドで寝ているんだぁ……」
いきなり誤解を招く超特大サイズのベッドを目の当たりにい、アイリアはドン引きしていた。
「それじゃあ、俺は床にでも――」
「シモーネよ」
「はい!」
ハノンが指をパチンと鳴らすと、シモーネが俺を羽交い絞めにしてベッドへとダイブする。
しまった。
完全に油断していた。
「シ、シモーネ!?」
「ごめんなさい、ベイルさん。――でも、一度でいいからみんなで一緒に寝てみたくて」
シモーネの純粋な想いを打ち明けられて、俺は抵抗をやめた。
「まあ、今日くらいはいいかな」
「ベイルさん!」
「言質は取ったわよ!」
俺の発言をきっかけに、まずはキアラがベッドへ。さらにシャーロット、マルティナと続き、
「お主も入れ」
「へっ!?」
ハノンがアイリアを誘う。
「で、でも……」
「何じゃ? ベイルのことなら問題ない。こういう時は安全な男じゃ」
どういう意味だよ。
思わずツッコミを入れそうになったけどグッとこらえる。アイリアの心が大きく動き始めているのを感じたからだ。
しばらく俯いていたアイリアだったが、
「僕は……ベイルを……」
「あれは勘違いじゃった。それに……何か事情があって、このようなことに手を染めたのだろう?」
「!?」
図星のようだ。
まあ、悪い連中にそそのかされたってことだろうし、俺としてはもう危険性がないと分かったんで特に大事にしようとは考えていない。
ただ、アイリアには罪悪感があるようだ。
――と、思っていたのだが、どうやら理由はそれだけじゃないらしい。
「僕はずっとひとりで暮らしていたから、こんな風に誰かと一緒に寝るなんて今までに経験がなくて……」
こんなに大人数で賑やかに過ごすということ自体が、これまでに経験がないことのようで、どうしたらいいのか分からないというのが偽りのない本音だったようだ。
それを聞いたハノンは優しげに笑い、
「お主の好きにしたらいい。何をどうしたいのか、自分の意思で決めるのじゃ」
「僕の意思……」
その言葉は、アイリアの胸に深く突き刺さったようだ。
そして、
「えいっ!」
意を決してベッドへと飛び込んできたアイリア。
どうやら、これが彼女の望んでいた行動ということらしい。
「それでいいんじゃ」
「ありがとう、ハノン」
「ワシはただ助言をしただけじゃよ」
うーん……とてもうちで一番年下とは思えない貫禄――厳密に言うと、種の頃からこの世界を見てきたということなので、実際はもっと年上なのだけど、それでもあそこまでどっしりしているのは驚く。
この行動でいろいろと吹っ切れたアイリアは、改めて俺に謝罪をし、明日の早朝に待ち合わせをしている依頼主の冒険者たちに今回の件を断るように告げてくると宣言した。
しかし、相手が相手なだけに、素直に終わるとも思えないので、それには俺たちも同行することにした。
というか、そんな連中を放ってはおけない。
とっ捕まえて騎士団に差しだしてやる。
こうして、いろいろとあった夜はようやく静寂を取り戻し、俺たちはひとつのベッドで眠りにつくこととなった。
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