第129話 モンスター対策
ギルドの掲示板には、嵐の谷に関する情報が数多く並んでいた。
「たくさんあるのねぇ」
「どれから目を通したらいいのか、迷いますね」
シャーロットとマルティナが言うように、張りだされている情報は俺たちが想定していたよりもずっと多い。これもひとつひとつ当たっていくのはなかなか骨だな。
「俺たちが特に注意したいのは、谷に出現するモンスターの存在だ。それに関する情報ってないかな」
「モンスター……ねぇ」
そう呟いたキアラの視線は、自然とシモーネに向けられた。以前、そのシモーネが、とある森に巣食った昆虫型モンスターを一瞬で蹴散らした時のことを思いだしているのだろう。
確かに、シモーネは強い。
うちのメンツでは、これ以上ないくらい強力な存在だ。
――ただ、必ずしも常にあの力が発揮できるとは限らない。
不測の事態が発生し、シモーネが万全の状態でなくなることも考慮しなくてはならないのだ。俺はそれを原作ゲームで嫌というほど味わった。
「うちの戦力の中枢は間違いなくシモーネだ。……でも、シモーネにばかり頼りきりというわけにはいかない」
「言えておるのぅ。シモーネの身に事が起きてから動きだしたのでは手遅れなんてこともあり得る」
どうやら、ハノンはその辺の状況を理解しているようだ。
「それもそうですわね」
「常に非常事態への備えは万全にしていく……ダンジョン攻略の基本ですね」
「あうぅ……みなさんのご迷惑にならないよう頑張りますぅ」
「シモーネは何も悪くないのよ？」
他のみんなも、理解を示してくれた。
シモーネに関しては、余計な心配をさせてしまったかな？ でも、キアラがうまいことフォローしてくれたみたいで、すぐに立ち直れた様子。パーティー内の雰囲気は本当にいい感じだな。
気を取り直し、俺たちは必要な情報を整理していく。
それによると――どうやら、問題のモンスターというのは鳥型らしい。
「いわゆる怪鳥ってわけね」
「世界中で目撃例があるみたいですね」
「そのようじゃのぅ」
「わ、私も、ドラゴン状態で空を飛んでいるとたまに見かけました」
「討伐した例はないのかしら」
シャーロットが怪鳥の討伐情報を探していると、ある張り紙を発見する。
「あっ、こちらにありましたわ。別大陸での話のようですが……」
「怪鳥というだけあって、別大陸にも出現しているのか」
「これによると、討伐されたのは割と最近のことみたいですわね。ジェロム地方の霊峰ガンティア……聞いたことありませんわね」
「かなり遠くの大陸みたいだな。――って、討伐したのはその地方の領主と領民たちで、しかも領主は俺たちとたいして年齢の変わらない少年じゃないか！」
騎士団や魔法兵団の手を借りず、領主と領民だけで怪鳥を討伐するなんて……よっぽど強いんだな、そこの領主って。
その討伐方法だが、
「重力魔法で怪鳥を地面に釘付けにしたって書いてありますね」
「重力魔法……ふたりは使えるのか？」
俺はキアラとシャーロットへ尋ねるが、ふたりは首を横へと振った。
「無属性魔法でも最強ランクの魔法よ、それ」
「相当な使い手がいたみたいですわね」
うーん……あのふたりがここまで言うくらいだから相当なものなのだろう。
同じ手段では怪鳥を倒せそうにない。
かといって、避けては通れない道だしなぁ。
「ねぇ、ベイル。続きは宿屋でゆっくり考えましょうよ」
「……それもそうだな。――うん？ 宿屋？」
……思い出した。
宿屋といえば――俺たちは同じ部屋で夜を明かすことになっていたんだった。
ま、まあ、その方が作戦会議もやりやすいし、ちょうどいいのかも。
そんなことを考えつつ、必要なことをすべてメモし終えた俺たちは、作戦を練るために宿屋へと戻ることにしたのだった。
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