第128話 情報収集
いろいろとトラブル(?)はあったものの、とりあえず部屋は決まったので俺たちは町へ繰り出して情報収集を行うことにした。
この手の内容を調べるには、やっぱり冒険者ギルドが一番だろう。
ドリーセンの町にも、ギルドはある。
ギルドマスターはフェリックスさんという名前で、シモーネの件ではだいぶお世話になった。
あの時は、ギルドに「山道にドラゴンがいる」という情報が寄せられ、それをもとに俺たちが調査へ乗りだしたって感じだった。それはきっと、ここも同じだろう。ダンジョンの情報だけでなく、アウドラの町やその周囲に関する情報がもたらされているはずだ。
その中にはきっと、嵐の谷に関するものもあるだろう。
――というわけで、俺たちはギルドへとやってきた。
中へ入ってみると、
「あら~? とっても可愛らしいお客様ね~」
ドギツイメイクに丸太のように太い腕。
明らかに中年男性だが、その出で立ちは真っ赤なドレス風の衣装という強烈なインパクト……まさか、あのオネエな方が受付嬢?
「こんばんは。ここのギルドマスターをしているバドスよ」
ギルドマスターかよ!
しかもめちゃくちゃ強そうな名前だな!
「言いづらければキャサリンでもいいのよ?」
「えっと……バドスさん」
「あら残念」
本当に心底残念そうなキャサ――バドスさん。
マルティナとキアラは、以前に似たようなタイプの人と会ったことがあるのか、割と平気そう。
一方で、「こういうタイプの人間もいるのか」という視点でバドスさんを見つめるシモーネとハノン。
その横ではシャーロットが口をあんぐりと開けて茫然としている。メンバーの中で一番衝撃を受けているな。
とりあえず、気を取り直して嵐の谷に関する情報がないか尋ねてみた。
「嵐の谷? ……あなたたちもハリケーン・ガーリック目当てのようね」
「あなたたちということは、俺たち以外にも?」
「多いわよ~。中には国のお偉いさんがわざわざ腕利きの冒険者を雇ってきているケースもあるくらい」
「国が?」
まあ、うちも似たようなものだけど。
「ただ、入手するのは極めて困難。最初からダメもとのつもりでやらないといけないわよ?」
「そ、そんなに難しいんですか?」
「手強いモンスターもいるし、そもそもこの谷自体が曲者でね。本気で手に入れたいと思うなら、入念な準備が必要よ」
「……みたいですね」
バドスさんとの会話中、俺は視線を感じていた。
それも、ひとつやふたつではない――このギルドにいる冒険者のほとんどが、バドスさんと話す俺たちへ視線を送っていた。恐らく、彼らは全員、ハリケーン・ガーリックを探すライバルだ。
それにしても、これだけの人たちが狙っているとは……効果は違うけど、うちで栽培しているサンダー・パプリカとかフレイム・トマトも、入手しようとしたらこれくらいのライバルと争わなくちゃいけないんだな。
改めて、俺はダンジョン農場の存在価値を確認できた。
「いいわ。あなたたち可愛いから、特別に応援しちゃう! これを持っていきなさい」
上機嫌のバドスさんが渡してくれたのは、嵐の谷の全体図を記したマップだった。これは助かる。
「それから、他の冒険者から寄せられた情報に関してはあそこの掲示板に張り出してあるから、好きに見て頂戴ね」
「はい! ありがとうございます!」
俺たちはバドスさんに礼を告げると、早速その掲示板へと向かうのだった。
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