第126話 アウドラの町
いよいよ嵐の谷へ向けて出発する朝を迎えた。
今回は向こうで何日か寝泊まりすることになるだろうから、そのための準備もしっかり整えておいたけど……正直、未知数なところがあるので、これで万全かどうかは分からない。
理想としては、モンスターとも出くわさずにパパッと見つけて戻ってくることだけど、そううまくもいかないだろうし、現地で食料などを買い足しながら、気長にやるしかないかな。
そんなことを考えつつ、俺たちは馬車へ用意した荷物を積んでいく。
今回もクラウディアさんとウッドマンたちにはお留守番を依頼するのだが、いつの間にかクラウディアさんはウッドマンたちをすっかり飼いならしていた。なんか、めちゃくちゃ懐いているんだけど……何したんだ?
――まあ、それはさておき。
旅の支度が整うと、俺たちはクラウディアさんとウッドマンたちに「行ってきます」と告げて、嵐の谷の最寄り町であるアウドラへ向けて出発した。
アウドラの町へは夕方前にたどり着くことができた。
「思っていたより大きな町だなぁ」
それが素直な第一印象だった。
イメージとしては、もうちょっと田舎町を想定していたのだが、人も多いし、何より活気がある。この町は【ファンタジー・ファーム・ストーリー】の中には登場しないので詳細はまったくの不明だったが、アイテム屋も数多く、資金さえあれば物資の調達には困らないだろう。
この日は町で情報収集することに専念するため、宿屋で一泊する予定だ。
その宿屋だが、実は魔法兵団トップであるディアーヌさんが手配してくれていた。まずは身軽になろうとその宿屋へ寄ったのだが、
「「「「「おお~……」」」」」
俺とキアラ、マルティナ、シモーネ、ハノンの五人はあからさまな高級感で覆われた宿の外観に驚いて呆然となる。
ただひとり、
「ふふん! わたくしの泊まる宿としては申し分ありませんわ!」
と、シャーロットだけ満足げだった。
「って、オルランド家の嫡男であるベイルさんは、どちらかというとわたくし寄りの反応をするのが正しいのではなくて?」
「そ、そうかもしれないけど……ダンジョンでの生活が長くて薄らいじゃったかな」
シャーロットの言う通り、オルランド家の名前があった頃は、このくらい高級な宿屋に泊まることはあった。しかし、それも過去のこと。今ではすっかりダンジョンにあるツリーハウスの生活が馴染んでしまい、この手の宿屋は随分と久しぶりだ。
ともかく、部屋に荷物を置いてこようと宿屋のロビーへ向かった俺たち――が、ここである問題が発生。
「えっ!? 部屋は三つ!?」
確保されていた部屋の数は三つだという。
俺たちは全員で六人いるから、ふたりずつ泊れば問題ない――いや、ある。
「……誰かがベイルと同じ部屋になるってことね」
キアラのこのひと言で、空気が張り詰めた……気がした。
「仕方ありませんわね。ここは元婚約者であるわたくしが」
「公平にジャンケンで決めましょう」
シャーロットの意見はキアラによって一蹴された。
そして始まる緊張感たっぷりのジャンケン。
「「「「「最初はグー!」」」」」
幕を開けた女子五人の戦い。
その結末は――
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