第122話 魔法兵団

 ハリケーン・ガーリックをうちの農場で育てることができれば、クレンツ王国の魔法兵団にとって大きなプラスとなるだろう。


 翌日、改めて魔法兵団の団長に会うこととなった。

 レジナルド騎士団長が取り持ってくれるそうだが……話を聞く限り、魔法兵団のトップは女性らしい。


 名前はディアーヌ。


 霧の魔女と対等に戦えるとされる魔法使い――けど、レジナルド騎士団長とは違い、あまり人前に出てこないという。なので、会えるかどうかは分からないというが……俺としても、一度は直接会ってみたいよな。

 さらに、レジナルド騎士団長からは、


「まあ……最初は驚くかもな」


 とのこと。

 驚くって……どういう意味なんだろう。

 とんでもない美人とか?

 

 いずれにせよ、明日には動きがあるはずだ。



 騎士団長との話を終えた俺は、ローレンスさんに案内されて今日泊まる宿屋の前までやってくる。そこは王都でもトップクラスに高級で知られる場所で、俺たちの稼ぎじゃまず泊まれない。


「い、いいんですか……ここ、高いんじゃ……」

「気にするな。俺の奢りだ」


 サラッと言ってのけたけど……そもそも実家が名家だもんなぁ。


「言っておくが、俺のポケットマネーだからな」

「き、肝に銘じておきます」

「よろしい。――くれぐれもシャーロットに変なことをするなよ?」

「りょ、了解です」

「それ以外の女の子となら何をしても許す」

「はい。――はい?」


 それはそれでどうなのかと思うが……。


「それが分かっているならばそれ以上何も言わない。俺は明日からまた遠征に出るからしばらくいなくなるが……くれぐれも頼むぞ」

「また遠征ですか?」

「これでもなかなか忙しい身でな」


 重度のシスコンぶりで忘れそうになるけど、ローレンスさんって将来を嘱望される騎士団の若きエースなんだよな。

さっき、レジナルド騎士団長が「ローレンスは騎士団で霧の魔女に対抗できる唯一の存在」とまで言わせた。――ちなみに、「重度のシスコンを除けば完璧な男だ」とも付け加えていたな。


「騎士団食堂の改善に魔法兵団強化のための食材探し……君は君で忙しそうだが、まあ、無理だけはしないようにしろ」

「えっ?」

「最高の仕事を果たすには最高のコンディションをキープし続けなくてはならない。それはたとえ騎士であろうと農夫であろうと変わらないはずだ。――違うか?」

「! は、はい! その通りだと思います!」

「分かっているなら、これ以上俺から何も言うことはない」


 ローレンスさんはそれだけ言い残して立ち去っていった。

 本当に……シャーロットがかかわっていない場面だと凄く有能に見えるな。


「あっ、ようやく来たわね」

「遅かったのぅ、ベイル」

「騎士団長さんから何か頼まれ事でもあったんですか?」

「どうせお兄様が余計なチャチャを入れてきたのでしょう?」

「何か立て込んでいたんですかぁ?」


 宿屋に入ると、みんなはロビーで俺のことを待っていてくれた。

 また難しそうな仕事が増えたけど……きっとみんなとなら成功させられるはずだ。


 そう確信した俺は、みんなのもとへと歩いていく。

 明日から、また忙しくなるぞ。






…………………………………………………………………………………………………


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