第115話 メニュー考案

 騎士団食堂の改善について、マルティナに太鼓判を押したヒューゴさん。

 しかし、どうやら成功の鍵を握るのはマルティナだけでなく――


「君の農場で育てている野菜もまた、改善には欠かせないキーパーツだ」

「な、なるほど」


 疲労回復&魔力アップ効果を持つうちの野菜たちをマルティナが調理して騎士たちへ振る舞う……確かに、これなら一石二鳥だろう。


「騎士団へはいつ顔を出す?」

「一週間後に使いが来ることになっています。それまでに準備を整えておけ、と」

「マルティナ。調理器具はあるか?」

「いつも使っている物で行こうかと思っています」

「包丁などはそれでいいかもしれんが、鍋やフライパンはサイズの大きい物を持っていくといい。一度に大量の調理を必要とするからな」


 確かにその通りだ。

 となると、調理するマルティナにも相応の技術が必要になってくる。初めての大量調理でどこまでやれるのか……腕の見せどころだな。


 その後も、マルティナはヒューゴさんからさまざまなアドバイスをもらい、それをメモに残していく。

 冒険者に憧れているとはいえ、そこは一流料理人の娘。

 料理のこととなったら目の色が変わるな。


 

 それから、俺たちはキアラたちと合流し、当主であるカルバン様へ挨拶を終えると、ツリーハウスへと帰還した。


 戻ってきて早々に、マルティナは一階キッチンでヒューゴさんから教わった内容のメモを見ながら、騎士団食堂に提供するメニューの考案を始める。


 俺たちは畑仕事のため、外へ出たが……根を詰めすぎないといいけど。


「彼女なら、きっとお兄様も満足できる料理を作ってくれますわ」


 畑の様子を見ながら心配そうにツリーハウスを眺めていると、それに気づいたシャーロットがそう言ってフォローしてくれた。彼女も、ここで暮らすようになってからマルティナの料理を口にしているため、それはきっと本心だろう。


「ああ……きっとやってくれるさ」


 あとでしっかり、マルティナには直接エールを送らないとな。

 ――話題は変わって、


「そういえば、ローレンスさんは他国との演習に出ていたんだよな?」

「えぇ。相手はフォレスター王国ですわ」

「フォレスター王国……」


 久しぶりに聞いたな、その名前。

 以前、橋づくりを阻止するため、森の中に潜んでいた巨大昆虫型モンスター――あれは何者かによって、あの森に放たれていた。目的は、間違いなく……このクレンツ王国とフォレスター王国の仲を破綻させること。


 そういえば、学園農場絡みの事件で遭遇した霧の魔女も、あれから目立った動きは見せていない。もともと、あの学園農場の件だって、学園側からすれば大事だが、世間からすれば小規模な事件だ。


 世界でも屈指の実力者であるあの魔女をその程度の件で終わらせるはずがない。

 雇い主――黒幕は、まだ何か行動を起こそうとしている。


 特務騎士として、それに関する情報も集めていかないとな。

 マルティナもあんなに頑張っているんだ。

 俺も、自分の新しい可能性を模索していかないと。



 そんなことを考えながら日々を過ごしていると――あっという間に約束の一週間後が訪れた。





…………………………………………………………………………………………………


【お知らせ】


 限定近況ノートに「嫌われ勇者」のSSを投稿しました。

 メイド三人娘と鈴木の他作品キャラに意外なつながりが……?


 その他の作品の番外編やセルフコラボも、不定期ですが載せていきたいと思います。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る