第108話 ハプニング?

 俺たちは海を遊び尽くした。

 自由気ままに、深く考えることなく、思いついたことはすべて実行した。

 たまに、


「海といえばスイカ割りだが、この世界にスイカは……確かあったはず。今年は無理そうだから来年か。そういえば、季節的に次は秋だな。ダンジョンに戻ったら新しい野菜を育てる計画を――」


 こうした、仕事の内容が脳裏をよぎることもあったが、すぐに水着姿ではしゃぐみんなが視界に入って、「浮かれなければ!」と我に返る。


 せっかくの機会だしな。

 仕事を円滑に進めるためにはメリハリが大事っていうのもあるし。

 みんなの水着姿をこの目に焼きつけておかなくては!


 考えを改めた俺は、みんなと一緒に夕暮れまで海での遊びを満喫した。



 辺りが暗くなり始める頃には、すでにメイドさんや船乗りたちの姿はなかった。

 船は明日のお昼頃にまたこの島へやってくるそうなので、それまではここでゆっくりとしていこう。


「楽しかったわね!」

「はい!」

「満喫できました~」

「海も悪くないのぅ」

「ふふーん! そうでしょう? わたくしに感謝しなさい!」


 どうやら、みんなも存分に楽しめたようで、とても晴れやかな表情をしている。日常とは違った時間を過ごしたことで、いいリラックス効果があったようだな。


「それでは、夕食までにお風呂に入ってはいかがでしょう?」

「「「「「賛成!」」」」」


 クラウディアさんからの提案で、女子五人は浴室へと向かった。

 俺も入ろうと思い、みんなのあとをついていったのだが――ここでひとつ問題が。


「あっ、すいません。ここは浴室が男女で分かれていませんので」

「そ、そうなんですか」

「はい。ですので、皆さんご一緒に入られては?」


 全員の顔が強張る。

 ……さすがにその提案は呑めないな。


「あの、クラウディアさん……さすがにそれはちょっと……」

「ただのメイドジョークですよ」


 ……本当か?

 割と本気の目をしていたぞ?


 ――まあ、ともかく、お風呂に関しては女子五人に入ってもらって、俺はあとからにしよう。


「残り湯は飲み干さないでくださいね。せっかく夕食が台無しになってしまいますから」

「飲まないよ!?」

「メイドジョークです」


 もはやどこまで本気か分からないな。

 とりあえず、俺は用意された部屋へと戻って、みんなが風呂から上がるまでの間、今後の活動について考えることにした。……結局、こういう場に来ても仕事のことはなかなか頭から離れないよなぁ。


 ただ、これは楽しいと思える仕事だ。

 それだけで、心持ちは天と地ほども違う。

 ありがたい話だよ。


 ――で、考え始めてから約一時間後。


「ベイル様。お風呂の用意ができました」


 わざわざクラウディアさんが俺を呼びに来てくれた。


「ありがとうございます」


 俺はそう返事をすると、着替えを手にして浴室へと向かう。

 シャーロットの話では景色のいい自慢の風呂らしいから、とても楽しみだ。

 脱衣所でササッと服を脱ぎ、早速ブラファー家自慢の風呂へ。

 ――と、その時、


「あれ?」


 立ち込める湯気の向こうに、薄っすら人のシルエットが見える。

 ま、まさか……まだ誰か入っていたのか!?

 もしや仕組まれた罠!?

 風呂場で鉢合わせなんて、メイドジョークじゃ済まされないぞ!?


 すぐに飛びだせばいいのだが、さまざまな思考が俺の動きを鈍らせていた。

 やがて湯気が晴れていき、その先にいたのは――



「待っていたぞ、ベイル・オルランド」



 全裸で仁王立ちしているローレンスさんだった。


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