第106話 美しき島

 島へ到着すると、俺たちは早速別荘へと案内される。

 メイドさんや港から一緒に乗船してきた船乗りたちが積み荷をおろしているので手伝おうとしたが、「今日はお客様ですから」と断られた。

オルランド家にいた頃はそう扱われるのが普通だったけど、みんなとツリーハウスで暮らすようになってからはいろんなことを自分でやらなくちゃいけないから、自然と体が動くようになっていたんだな。


 そうした自分の変化に驚きつつも、ここはお言葉に甘えてお任せすることに。

 で、その島なんだが、


「おぉ!」


 上陸して改めて、その美しさに感動する。

 サラッサラの砂浜に、宝石を散りばめたように輝く青い海。

 おまけにブラファー家の所有する島ということで、俺たち以外には誰もいない、まさにプライベートビーチだった。


 俺たちは海水浴の準備をするため、一足先に別荘へと足を運ぶこととなった。



 別荘は船着き場から歩いて五分ほどの場所にある。

 数日前から使用人の方々が前乗りして掃除などを行っていたというだけあって、本宅となんら変わらない。


 中へ入ると、早速それぞれの部屋を教えてもらったのだが、


「あれ? 俺の部屋は?」


 なぜかクラウディアさんからは俺の部屋だけ告げられず。


「その必要はないかと思いまして」

「えっ? どういうこと?」

「ベイル様はシャーロット様と同じ部屋でよろしいのでは?」

「「!?」」


 これにはシャーロット自身も驚いていた。どうやら、事前に聞かされていなかったようで、完全な不意打ちらしい。 

 だが、当然この提案に異を唱える者が続出。

 まずはキアラが先頭に立って猛抗議をし、それにおずおずとマルティナやシモーネが続いていく。ハノンはどっちつかずという反応だったが、キアラに何やら耳打ちされたことで最終的には「やはり看過はできないな」と反対派に回った。


「わ、わたくしとしても、それはいささか問題ありというか早計というか」


 やんわりとだが、シャーロットも反対派に回ったことで、クラウディアさんも「ではまた次の機会に」と撤回してくれた――が、次の機会って……


 まあ、それはそれとして、せっかく海へ来たのだ。

 すぐに水着に着替えて派手に遊ぶとしよう。



 ――と、思ったのだが、女性陣の支度が思いのほか長引いている。

 男女で所要時間に違いがあるといのは理解していたが……さすがにちょっと長すぎやしないか?

 状況を確認したクラウディアさんからの提案で、俺は一足先にビーチへと行き、パラソルを立てたり荷物を運んだりと、先乗りすることにした。


「それにしても、本当に綺麗な海ですね」

「大陸側はリゾート地にもなっていますからね。この地方の自慢ですよ」


 確かに、これだけ綺麗な海なら、十分売りになるな。


 しばらくふたりで海を眺めながら待っていると、背後からみんなの声がした。

 どうやら、支度を終えてこちらへと移動してきたらしい。


 待たされすぎたので「遅いぞ」と文句のひとつでも言おうと振り返った――が、目の前に広がる光景に息を呑み、何を言おうとしていたのかさえその瞬間に吹き飛んでしまったのだった。





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「風竜の力を宿した少年は世界最強の風魔法使いとなる。」



https://kakuyomu.jp/works/16816927860199657582



コンテスト用なので5~6万文字ほどの中編を予定しています。

よろしくお願いいたします!<(_ _)>


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