第94話 予感
薬草農園絡みの事件は、これにて幕引きとなった。
――だが、根本的な解決には至っていない。
その最大の要因は霧の魔女。
一体、彼女は何が狙いで妨害工作をしてきたのか……薬草農園事件の前に起きたふたつの事件にも関与している可能性は高そうだし、なんとも不気味な存在と言える。
ただ、今回の件を通して、騎士団の警戒レベルは大幅に上昇した。特に今は、隣国であるフォスター王国との件でいろいろと神経尖らせているからなぁ……霧の魔女の介入はホント迷惑に感じていることだろう。
図らずも……俺たちはその三件すべてになんらかの形でかかわりを持っている。
変に目をつけられなきゃいいけどな。
ダンジョンの地底湖へ戻ってきた俺たちは、農場の様子を確認してから夕食の準備に取りかかる。
ちなみに、あの後で王都をいろいろと散策してみたが……やはりあそこは広い。
以前、朝市に参加した時にも見て回ったが、今日はその時に回れなかった分をこなしていこうと躍起になり――結局完走はできなかった。
「王都巡りは次回に持ち越しだなぁ」
「あの王都……無駄に広すぎない?」
「あそこは、言ってみれば国家の持つ力が具現化したものじゃ。特にクレンツ王国は財力があるみたいじゃからのぅ……あれだけの規模になるのも仕方がないというものじゃ」
ぼやくキアラへ、ハノンが冷静に返す。
さすがはアルラウネ。
古くからの記憶も受け継がれているだけあり、世界情勢にも詳しい。
……まあ、仮に世界を揺るがすような危機であっても、俺の力ではどうすることもできない。なんたって、俺の持っている剣は竜樹の剣――農業特化の剣だからな。
「さて、こんなところかな」
農場へ戻り、軽く作業をして汗を流すつもりだったが……思いのほかガッツリと没頭としてしまったな。
薬草管理をしているキアラも、今後は学園に足を運ぶ回数が増えそうだし、やりがいを感じているようだ。それに触発されて、俺も農場の今後についていろいろと思案しているところであった。
とりあえず、野菜は現状を維持。
いずれはもっと種類を増やしていけたらと思っているが、現状はこれでいいだろう。
額に浮かぶ汗を二の腕でふき取ると、ツリーハウスからマルティナとシモーネが出てきた。
「ご飯ができましたよ~」
元気な声で呼ばれると、俺とキアラはすぐさま返事をして家に向かう――が、
「…………」
ハノンはジッとして動かず、天井に空いた穴からのぞく空を眺めていた。
「? どうかしたのか、ハノン」
「……どうにも妙な感覚があってのぅ」
「妙な感覚?」
「……いや、考えすぎじゃな」
首を横へ振り、発言をなかったことにするハノン。
恐らく、それは感覚的なことで、うまく言葉に表現できないのだろう。――だが、裏を返せば、それくらい不気味な気配がするということもである。
アルラウネのみが感知できている感覚。
植物絡みの案件だろうか……もしかして、あの霧の魔女がすでに次の手を打ってきたとか?
さすがにそれは飛躍しすぎかもしれないが、警戒をしておくべきだろう。
……明日、グレゴリーさんの商会を訪れる予定だし、その時にチラッと話をしてみてもいいかもしれない。
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