第88話 予期せぬ事態
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「言霊使いの英雄譚 ~コミュ力向上のためにマスターした言語スキルが想像以上に有能すぎる~」
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現在40話ほどで更新が止まっておりますが、カクヨムコン参加のため1月から投稿を再開する予定です。
「ざまぁ」、「追放」からの逆転劇がお好きな方はぜひ!
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学園に届ける薬草を詰め終えた俺たちは、学園へ向けてダンジョンをあとにする。
「うぅ~ん……いい天気ですわねぇ~」
普段乗り慣れている馬車とは違い、今回は荷台付きのもの。しかし、シャーロットは嫌な顔ひとつせず、むしろ「新鮮な体験ですわ!」とノリノリで荷台へと乗り込んだ。ちなみに、御者はクラウディアさんが担当してくれることに。
いつもの馬車は四方を囲まれ、備え付けの窓からしか外の景色を見ることができなかったが、今は違う。シャーロットは、どこへ視線を動かしても風景を楽しむことができるこの馬車をいたく気に入った様子だった。
「いつもの馬車と違って解放感がありますわね」
「あっ、それあたしも思った」
「キアラさんと意見が一致するなんて……でもまあ、これに乗ったらそう思うのも無理ありませんわね」
「違いが分かるようなこと言っちゃって」
シャーロットとキアラの関係にも変化があった。最初の頃に感じた険悪さ――いや、険悪というよりも、行き過ぎたライバル意識というものが薄れ、互いを認め合い、程よい対抗心が芽生えているって感じだ。
「いい感じですね、あのふたり」
「ああ、そうだな」
ツリーハウスで過ごしているうちに、両者の関係に良い影響が出ている。これはまず間違いないだろう。そういえば、キアラも最初はそうだったものな。
ふたりの穏やかなやりとりに、ハノンやシモーネも混ざって楽しく見届けているうちに目的の学園へと到着。
すると、正門前で腕を組みながらこちらを見つめるひとりの男性が。
「ウィリアムスさん?」
「おぉっ! 待っていたぞ!」
薬草農園の管理者であるウィリアムスさんだった。
どうやら、俺たちが持ってくる薬草を待ちきれずに外で到着するのを心待ちにしていたようだ。俺たちを発見した時に見せた少年のような煌めく笑顔がその証拠――よっぽどショックだったんだなぁと改めて思うよ。
「その荷台に乗っているのが……」
「はい。確認してみてください」
「お、おう」
ウィリアムスさんは早速荷台に詰めてある薬草へと目を通す。
すると、みるみる表情が変化していき、
「す、素晴らしい……」
小声でそう漏らした。
「あのライマル商会からお墨付きをもらっただけのことはある。ここまでの上物は市場でも滅多に出回らないぞ。それがこんなに大量に……」
すぐさま薬草の品質を見抜いた――さすがウィリアムスさん。
「農園で収穫する予定だった薬草の代わりとしては大丈夫そうですか?」
「もちろんだ! 待っていてくれ! すぐにスラフィンさんを呼んでくる! 馬車は農場の方へ回しておいてくれ!」
大喜びのウィリアムスさんは、その高いテンションのまま校舎へと走っていった。
「気に入ってもらえたようで何よりだよ」
「とりあえずはひと安心じゃな」
「よかったですぅ」
ホッと胸を撫で下ろしていると、不意にシャーロットの顔が視界に入った。
俺はその表情に違和感を覚える。
なぜなら、さっきまでの明るさは鳴りを潜め、顔面蒼白だったのだ。おまけに、すぐ横に立っているキアラやクラウディアさんも似たような顔つきで固まっている。
一体何を目撃したのか。
三人の視線を折っていくと、そこには一台の馬車があり、その周囲を数名の兵士が守るように立っている。
その馬車に描かれた紋章――あれは、
「あれは……ブラファー家の?」
そう。
あの馬車は、ブラファー家の馬車だったのだ。
でも、一体なんで学園に?
……なんだか、猛烈に嫌な予感がしてきたぞ。
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