第87話 問題点

【お知らせ】


 新作を投稿しました!


「引退賢者はのんびり開拓生活をおくりたい ~不正がはびこる大国の賢者を辞めて小国の離島へと移住したら、なぜか優秀な元教え子たちが集まってきました~」


https://kakuyomu.jp/works/1177354054896085495


 メインテーマは【スローライフ&開拓】!

 のんびりまったりしつつ、トラブルに巻き込まれてしまう主人公の明日はどっちだ!

※カクヨムコン7参加作品です。応援よろしくお願いいたします!<(_ _)>



…………………………………………………………………………………………………




 新たにツリーハウスへ住むことになったシャーロット――が、それはまだ確定したわけではない。

 こちら側からは特に何もないのだが、移住に関して最大のネックとなるのは……間違いなくシャーロットの両親だろう。

 

 シャーロットは貴族令嬢。

 キアラも立場的にはあまり変わらないのだが、あっちは両親が娘の自主性を尊重するタイプの人たちだったので、むしろそうした決断を下したことに対して喜びさえ感じているようだった。


 しかし、シャーロットの場合は違う。

 おまけにあっちは俺の元婚約者。

 シャーロット自身はもう覚えていないようだけど……絶対に両親は覚えている。

 まだ小さかったから、俺は婚約に破棄に至るまでのゴタゴタについて詳細な情報を得ていないが……場合によってはとんでもなく面倒なことに発展するのではないか。


 あの場の勢いに任せてOKを出してしまったが、早計だったか?

 でも、あれを断るのはさすがにちょっと……


「うーん……」

「お悩みのようですね」

「そりゃそうだよ――って、うわっ!?」

 

 学園に持っていく薬草を荷車に乗せている途中で不意に声をかけられる。

 声の主はクラウディアさんだった。


「ク、クラウディアさん……」


 もしかしたら、クラウディアさんは事情を知っているかもしれない。

 最初に聞いた時は婚約解消の理由を知らないって反応だったが、あれはブラフで本当は何か知っているんじゃないか?

 そう思った俺は早速尋ねてみることに。


「あ、あの」

「なんでしょうか?」

「実は大切なお話がありまして……」

「大切なお話……? ――あれだけ若い少女を囲ってなお私のような年増に手を出すおつもりですか?」

「誤解だよ!?」


 とんでもない方向で解釈されていた。


「冗談です」

「そ、そうですか……」


 とてもそうは思えない真顔だったけど……この人だけは本当にいろいろと読めないな。

 気を取り直して、


「俺とシャーロットの婚約解消についてなんですが――本当にクラウディアさんは何も知らないんですか?」

「存じ上げませんね」


 ハッキリと言いきられた。


「そ、そうですか……シャーロットの移住をあっさり承諾してしまったんですけど、ご両親からの許可は――」

「もらっていません」

「ですよね」


 一縷の望みをかけて、「実は承諾済み」というオチを期待したが、現実はそう都合よくいかないみたいだ。


「じゃあ、事後報告になるんですよね」

「そうなりますね」

「しかも移住先にいるのは婚約破棄となった相手」

「ネタとしてはこれ以上ないくらいワクワクしますね」


 いや、ネタって……しかし、表情の変化は見られないが、本当に心が躍っているようにウキウキしているのが伝わってくる。


「ちょっと心配になってきたなぁ」

「でしたら、旦那様に直接お会いしてみますか?」

「へっ? どうやって?」

「本日、旦那様は学園にいらっしゃる予定です」

「はあっ!? ど、どうして!?」 

「お嬢様の様子を見に」


 絶望的な状況じゃないか!


「な、なら、学園に薬草を届ける日を改めた方が……」

「それは困ります」


 食い気味に、クラウディアさんが言う。


「あなたには是非とも旦那様に会っていただき――説得をお願いしたいと思っています」

「せ、説得!? 俺が!?」

「お願いします。お嬢様は……本当にこの場所を――あなたたちを気に入っているようなのです」

「クラウディアさん……」


 ……今なら分かる。

 クラウディアさんが大真面目だということが。


「分かりました。やれるだけのことはやってみます」

「っ! ありがとうございます」


 深々と頭を下げるクラウディアさん。

 我ながら、お人好しとは思うけど……やっぱり放ってはおけないよな。


 ブラファー家当主――顔を合わせた記憶は薄っすらあるけど、どんな人だったかは覚えていないな。

 ……なんとか無事に戻ってきたいな。

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