第69話 新たなプラン
ネイサン村での件については、グレゴリーさんから王国騎士団へ報告がなされることとなった。
今回もっとも注意すべき点は、確実に何者かの手引きがあったことだろう。
エーヴァ村でのカミキリムシ型モンスター襲撃事件は、なんらかの理由でモンスターが住み着いてしまったために起きた――そう見る騎士団の人間も少なかったという。
だが、今回は確実に人為的な手が加えられている。
さすがに、騎士団も重い腰を上げるだろうとグレゴリーさんは見ていた。
――まあ、その辺のいざこざに関しては、お偉いさんたちに任せるとしよう。
俺は農場拡張計画を進めさせてもらう。
ネイサン村から戻ってきた翌日。
この日、キアラは学園に用事があるとのことで朝から出かけており、不在。マルティナはダンジョンへ探索に出ており、こちらもいない。さらに、シモーネは家畜たちの世話に必要な道具を取りそろえるためドリーセンの町に行っており、ハノンもそれについていった。
つまり、今は俺ひとりという状況だ。
「思えば……ここにひとりでいることって初めてかもな」
初めてこの地底湖を訪れた時には、すでにマルティナがいたからな――気絶していたけど。
そのあとで、キアラが落っこちてきて、スラフィンさんからもらったアルラウネの種からハノンが生まれ、そしてシモーネと出会ったのだ。
もうだいぶ昔のことのようだなぁ――って、今は浸っている場合じゃない。
農場をさらに広げていこうと計画していたが……当初の予定とは少し違った形となりそうだ。
元々は飼育スペースを広げ、もう少し大型の家畜を育てるつもりでいたのだが、それにしては少し狭いという結論に達した。竜樹の剣がもう少し成長すれば、いろいろとやりようはあると思うので、先に今できる範囲で可能な栽培へ着手することにしたのだ。
その中で、俺が注目したのは――薬草栽培だった。
これまでの実績としては、キアラが課題としてテーマにあげていたランネロウという薬草のみ。
今回は武器の素材としても利用される薬草をいくつか育てたいと考え、そのための新しいスペースを確保していく。
「こんなところでいいかな」
薬草栽培スペースは、ハノンが管理する作物栽培スペースのすぐ横に決まった。
具体的に育てようと思っている薬草だが、とりあえず体力や状態異常を回復する効果を持つものを中心にしたい。
理由はシンプルで、需要があるからだ。
ダンジョンという空間に長い時間滞在する冒険者にとって、不測の事態というのはつきもの。そんな時、すぐに対処できるようさまざまなアイテムを持ち歩く彼らにとって、こうした回復特化型アイテムは重宝するのだ。
しかも、うちの薬草は地底湖に含まれる魔力のおかげで効果倍増――いや、それどころか、追加効果だって得られる優れものなのだ。
これもまた、グレゴリーさんへのいいアピールになる。
「よし。そうと決まったら、早速育成を――って、あれ?」
竜樹の剣を使って早速専用のスペースを作ろうとした矢先、ツリーハウスからある人物が出てきてその姿が視界に飛び込んできたため、動きが止まる。
「あれは……」
視界に飛び込んできた人物は――キアラであった。
しかし……どうも様子がおかしい。
なんだか元気がないようだ。
学園で何かあったのか?
気になった俺は作業を止めて事情を聞こうと駆け寄った。
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