第68話 推察

 謎の傭兵たちによって捕らえられていたネイサン村の住人たちは全員解放することができた。

 さらに、時を同じくして、


「いやぁ、まいったよ」


 グレゴリーさんたちがネイサン村へと戻ってきた。


「! グレゴリーさん!」

「おぉっ! 無事だったか、ベイル! それにみんなも!」


 俺たちの姿を発見したグレゴリーさんは大慌てで駆け寄ってくる。そして、解放された村人たちの様子を見たところで、俺たちが何をやったのか――それを理解してくれたようだ。


「また君たちに助けられたようだな」

「いや、今回はシモーネのおかげですけど」

「ふえっ!?」


 シモーネ自身は驚いていたけど、あのド迫力がなければ状況を好転させることができなかっただろう。まさに殊勲賞ものだ。


「確かに、シモーネの雄叫びは凄かったわね」

「私もびっくりしちゃいました」

「あれはシモーネにしかできぬのぅ」


 三人からも高評価を得られたようで、シモーネは恐縮しっぱなしだった。


「わ、私なんかがそんな……こ、今度はもっと凄い迫力が出せるように練習していきます! がお~!」


 ……人間状態でやる雄叫びはむしろ可愛いって感想が先行するな。

 たぶん、ドラゴン形態の時も今みたいな叫び声なんだろうが、もはや別物だ。

 お互いの無事を喜び合っていると、


「父ちゃん!」

「セ、セルヒオ!」


 すぐ近くで親子の感動の再会が行われていた――って、セルヒオの父親はあの傭兵たちに立ち向かっていった男性だったのか。



 落ち着いたところで、セルヒオの父親であり、この村の農夫たちのまとめ役を担っているというタイラーさんから話を聞くことにした。


「連中の正体については分かりません。突然村へやってきて、我々をここまで誘導し、閉じ込めました」

「なるほど」

「あっ、それと、連中は畑を燃やすとも言っていました」

「畑を燃やすだと?」


 タイラーさんからもたらされた情報を聞いた途端、グレゴリーさんの表情が曇る。

――俺も同じところで引っかかっていた。

 

「食料に困って奪いに来たというならまだ分かるが……なぜ燃やす必要があるんだ? そんなことをして連中に何の得がある?」

「バックに雇い主がいたとしても、畑を燃やすなんて依頼はちょっと気がかりですよね」

「あぁ……まったく意図が読めん」


 俺とグレゴリーさんは揃って頭を抱えた。

 敵の狙いは一体何なのか。

 それがハッキリすれば、今後の対策を練られる。


 仮に、エーヴァ村の森にカミキリムシ型のモンスターを解き放った犯人と同一人物だとすれば――


「国力低下……それが狙いでしょうか」

「もっとも可能性が高いのはやはりそこか」


 どちらも国の経済に大きな影響力を及ぼす要素であり、事件のあったふたつの村は、国内でもそれらの従事者が多いことで有名だ。

 また、食料や金品の強奪が目当てではなく、あくまでも仕事の邪魔をしにきているような感じだったし……。


「いずれにせよ、これもしっかり騎士団の方へ報告を入れておくか」

「それがいいと思います」


 敵の狙いは一体何なのか。

 騎士団は正体不明の存在にしばらく苦しめられることになりそうだ。

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