第26話 ドラゴン退治へ

「「ドラゴン討伐!?」」


 商会の店に戻った俺は、グレゴリーさんから提案された内容をみんなに伝えた――のだけど、やっぱりそういう反応だよな。

 ――たたひとり、


「なかなか面白そうではないか」


 マルティナとキアラが選んだ服をバッチリと着こなすアルラウネのハノンだけは違ったリアクションだった。


「お、面白そうって……相手はドラゴンなのよ!?」

「そうですよ! 危険です!」

「何もすべてのドラゴンが人間に対して敵対行動をとるわけではないぞ」

「俺もそう思う。だから、ドラゴン討伐とはいえ、まずは相手の出方をうかがおうってことになったんだ」

「「出方をうかがう?」」


 俺の言葉を受けて、マルティナとキアラは顔を見合わせて首を傾げた。

 ……無理もない。

 俺はこの世界が【ファンタジー・ファーム・ストーリー】の中だってことが分かっているから、ハノンの言うようにすべてのドラゴンが凶暴凶悪ってわけじゃないということを知っている。中には人間に対して友好的な者もいるのだ。

 だが、実物を見たことがなく、さらに偏った情報しか持っていないふたりからすれば、俺のやろうとしていることは自殺行為以外の何物でもないだろう。


 それでも、俺はドラゴンに会うべきだと思っていた。

 これからの生活を大きく変える可能性がある。それをむざむざ見過ごすわけにはいかないからな。

 ……しかし、ここまで怯えているふたりを無理やり同行させるもの気が引けた。なので、ここは俺と、ドラゴンをまったく怖がっていないハノンのふたりで行くと告げると、


「い、行かないとは言っていないわ」

「わ、私もです!」


 いろいろと思うところはあるようだが、とりあえず一緒に問題のドラゴンのもとへ向かうこととなった。


「ありがとう、ふたりとも」

「まあ、これもいい経験だと思うことにするわ。次のレポートにも生かせそうだし」

「もっと強い冒険者になるためには、ドラゴン程度で怯えているわけにはいきませんからね!」


 いや、ドラゴンってかなり上級モンスターなんじゃないか? ……って、モンスター扱いするのもおかしいか。ゲームの中では神格化されている節もあるし。


 ともかく、ドラゴンとの初遭遇に向けて、俺たちは商会でアイテムを整えると、早速その準備のためツリーハウスへと戻ったのだった。



 ◇◇◇



 翌朝。

 俺はウッドマンたちに畑の管理を任せると、屋上部分から森へと抜けて待ち合わせ場所であるドリーセンの冒険者ギルドへと出発した。



 ギルド周辺には武装した冒険者たちが大勢集まっていた。

 昨日、ギルドマスターであるフェリックスさんから聞いていた参加人数よりもずっと多いな……もしかしたら、あれからさらに人を集めたのか?


「おぉ! よく来てくれた!」


 人ごみの中、俺たちに声をかける人物が――噂のフェリックスさんだ。


「おはようございます、フェリックスさん。凄い人だかりですね」

「ああ。本物のドラゴンってものがどの程度なのか、せっかくの機会だからと参加を希望する者が増えてね。こちらとしても、兵力が増えることは望ましいから願ったり叶ったりってところだが」


 完全に物見遊山気分だなぁ。

 ちょっと不安な面はあるが……しかし、集まっているのはそれだけの余裕発言が飛びだしてもおかしくはない屈強な猛者ばかりだった。彼らからすれば、子どもばかりで構成された俺たちのパーティーこそ、ピクニック気分で参加しているのではないかと疑われてしまうな。


 

 その後、グレゴリーさんと彼が連れてきた商会専属の冒険者たちが合流し、いよいよドラゴンがいるという林道へ向かうことに。


「さて、楽しみじゃのぅ」

「うぅ……なんか、今になって急に緊張してきたわ……」

「だ、大丈夫ですか、キアラちゃん。お昼ご飯用にフレイム・トマトとサンダー・パプリカのピクルスを瓶詰して持ってきましたけど、食べますか?」

「緊張感があるんだかないんだが、どっちかにしなさいよ……」


 うちは相変わらずのテンションだなぁ。

 まあ、こっちの方がうちらしくて逆に頼もしく感じるよ。

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