第24話 トラブル発生
俺はこれから冒険者ギルドへ赴くというグレゴリーさんに同行することとした。
ちなみに、他の女子三人は買い物を続行するとのことで、俺は単独で冒険者ギルドへと足を運ぶことに。
その道中、グレゴリーさんといろんな話をした。
「冒険者ギルドは初めてかい?」
「えぇ。でも、関心はあって、一度は行ってみたいと思っていたんです」
「なるほど。だったら、今から楽しみなんじゃないか?」
「それはまあ……でも、何かトラブルがあったんですよね?」
「あぁ……」
急激に表情が曇るグレゴリーさん。
しかし、思わぬ言葉をもらった。
「今回の案件だが……君にとっても無視できるものではないぞ」
「えっ?」
「ひいてはこのドリーセンの町の存続にかかわることだ」
な、なんだが大事の気配が漂ってきたぞ……。
「だが、君が同行を申し出てくれて嬉しかったよ」
「そ、そうだったんですか?」
「まあな。といっても、これは俺の直感なんだが――今回のトラブルを解決する鍵は君にあると思っている」
「お、俺にですか!?」
あらゆる修羅場を経験し、今や大陸でその名を知らぬ者はいないというライマル商会のトップが、俺に期待している……?
なんだかちょっと信じられないな。というか、
「俺が愛用しているこの剣に、戦闘能力はありませんよ。――ご覧の通り」
俺は鞘から竜樹の剣を取りだしてグレゴリーさんに見せる。その見た目は、枯れ木を剣に似せて作った模造用にしか映らない。斬ることはおろか、殴りつけても大したダメージにはならないだろう。
だが、この世界で暮らしていくにあたり、これほど役に立つアイテムは他にない。俺は戦闘面での活用を丸投げして、そちらの方面で存分にこのアイテムを活用させてもらっている。
「今回のクエストで俺が力になれることなんて……」
「それはやってみなくちゃ分からないさ」
豪快に笑い飛ばすグレゴリーさん。
ますますクエストの内容が気になってきたな。
ドリーセンの町の最北端にある冒険者ギルド。
俺たちが住んでいるダンジョンも、ここの冒険者ギルドに関連するクエストがいくつかあるらしい。マルティナも、ここであのダンジョンの情報を集めて潜ったって言っていたな。
ギルト内は屈強な冒険者たちで溢れかえっていた。
鍛えあげられた肉体に禍々しい武器を装備した中年男性。
怪しげなローブに包まれ、呪文のような言葉をつぶやく若い女性。
もちろん、それだけに限らず、いかにも冒険者って感じの人たちで賑わっていた。
……うん。
ここも【ファンタジー・ファーム・ストーリー】にあった冒険者ギルドそのままだ。
平静を装っているが――俺は興奮している。
「さて……フェリックスはどこかな?」
その名に聞き覚えがあった。
フェリックス・オードナー。
ドリーセンの町のギルドマスター。
ゲームでも重要な役どころだ。俺もこの人には何度もお世話になっているし。
しばらくそのフェリックスさんを捜していると、
「やあ! よく来てくれたな、我が友よ!」
やたらテンションの高い男性が手を振りながら近づいてくる。
間違いない。
ゲームの立ち絵とも特徴が一致する。
この人が……ギルドマスターのフェリックスさんだ。
「よぉ、フェリックス。今日は――」
「分かっているさ。……例の件だろう?」
「その通りだ」
「やはりな! 安心しろ。すでに腕利きの冒険者を数名用意しておいた!」
そう語ったフェリックスさんの指さす先には……おぉ……確かにめちゃくちゃ強そうな冒険者たちが十人近く顔をそろえている。
「彼らならばあのクエストを見事成功させてくれるだろうよ」
「それは期待できそうだ――が、今回はそこにもうひとり加えてもらいたい」
「何? ……まさか、そっちの少年か?」
フェリックスさんは驚きの表情を浮かべながら俺を見る。
ま、まあ、そりゃあそこにいる冒険者たちに比べたら圧倒的に迫力不足なのは否めないけどさ。
「こ、こんな少年に務まるのか?」
「やってみなくちゃ分からんだろう?」
「それはそうだが……まさか、本当にやらせてみるつもりなのか――ドラゴン退治を」
「えっ?」
な、何?
今フェリックスさん、何て言った?
「俺はその可能性を見ている――このベイルという若者ならば、ドラゴンさえも倒してしまうんじゃないかってな」
どうやら、俺の聞き間違えじゃなかったみたいだ。
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