第4話 隠しルートの先にあるモノ

※次は17:00に投稿予定



 俺は隠しルートを進むため、あの行き止まりへと戻ってきた。

 一見すると、どこにも通じていないように見えるが――ここにはちょっとした仕掛けがある。


「えぇっと……ゲームだと確かこの辺に……お? あった!」


 俺は近くにあった大きな岩の陰に隠されている小さな魔法陣を発見する。

 誰が仕掛けたのか、ゲームの正規ストーリーでさえまだ言及されていないが、ともかくこれこそがこのダンジョンに隠された最大の秘密。


 俺は魔法陣に魔力を注ぐ。

 すると、行き止まりだったはずの壁が崩れ、その先に道が生まれた。

 隠しルート。

 ゲーム内ではそう呼ばれていたな。


「よし……みんな、行くぞ」

「「「「「キーッ!」」」」」


 五人の使い魔ウッドマンと、気を失った名も知らぬ冒険者の女の子とともに、俺はさらにダンジョンを進む。ゲームで見ていた光景を実際に歩くというのは、なんとも言えない不思議な感覚だ。


 しばらく進んでいると――目的地へとたどり着いた。


「うおぉ……」


 思わず感嘆の声が漏れる。

 目の前に広がっていたのは筆舌に尽くしがたい美しい光景であった。

 何よりも目を引くのが、


「これが……あの地底湖……」


【ファンタジー・ファーム・ストーリー】のゲーム内ではおなじみとなっている、隠しルートの先に存在している地底湖。特定アイテムを有していなければ、さっきの魔法陣を見つけることができないため、本当にレアな場所であり、そのレアリティに相応しい恩恵が目白押しの場所だ。

 ちなみに、俺はその特定アイテム――竜樹の剣を持っているため、魔法陣の居場所を特定できた。

 恐らく、ゲーム同様、こうしたアイテムを持っていない者は、同じ場所を探しても魔法陣を見つけだせないだろう。


「しかし……本物は圧巻の一言だな」


 いつまでも見続けていたくなる風景だ。

 地底湖は非常に透明度が高く、底が見える。さらに、天井には岩壁がなく、大きな穴が開いており、そこからは地底湖にも負けない綺麗な青空が広がっていた。さらに、その穴から差し込む日の光が湖面を照らしており、キラキラとした眩さを演出している。


 まるで一服の絵画を彷彿とさせるその幻想的な情景……なんていうか、言葉にあらわせられないな。この場にPCがあれば即座にデスクトップ画面に設定しているよ。


「っと、いつまでも感動に浸っている場合じゃない」


 俺は適当な大きさの岩を見つけると、ウッドマンたちにそこへ冒険者の少女を寝かせるように指示を出す。彼らにはこれから別の働きをしてもらわないといけないから、身軽にしておかないとな。


「みんな、聞いてくれ。俺たちはこれからここで暮らす住まいを造る」

「「「「「キキーッ!」」」」


 このゲーム――【ファンタジー・ファーム・ストーリー】は、その名が示す通り、剣と魔法の世界で農場を作り、そこで作物を育て、売り、得たお金がさらに発展させていくことを目的としていくのが主な内容だ。


 本来ならば、農場づくりのためにいろいろとしなければならないのだろうが……それよりもまずは生活の拠点となる家づくりだ。


 ここでも役に立つのは……やっぱり竜樹の剣だ。


「さて、そろそろ始めるか」


 俺は再び竜樹の剣へ魔力を注ぎ始めた。

 すると、すぐに剣は緑色をした魔力をまとい――これで準備は整った。

 これからいよいよ家づくりがはじまる。

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