自分が

◇ ◇ ◇


 強い潮の匂いを孕んだ海風が吹いてくる。爽やかに吹くその風は小さな僕に「海に落ちそう」という少しばかりの恐怖を与えていた。しかし、心の中では「落ちるわけない」と勝手に安堵していたのも事実だった。


「まだ?」

「うーん……まだかなぁ」

「えぇぇ」

 海が父にそんな質問をした。そうやって海は僕らの周囲を歩き始める。特に意味もなく。それとは反対に僕は父のそばにじっと座り、竿に何かがかかるのを待った。ああ……色々思い出した。それであの時、強い風が…………

 あれ、どうしたんだっけ。この後どうなったか、頭に靄がかかったように思い出せない。あの後、僕は、僕達は何をしていた?


◇ ◇ ◇

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