第38話
ソロモン。
彼は頭がとてもいい人だ。
どちらかというと、数学的な考え方をする人だ。
彼は身を持つ前、転生前はエジプトの天神ホルスとして存在していた。
あのエジプトの土産物屋によくあるホルスの目、ウジャトの目のホルスだ。
全て見てるぞ、全てお見通しだ。…牽制し過ぎ。
怖かったのだろうな、生きていくのが。
彼はまだ地球が出来る前、あっと息を飲むほどに圧倒され、正気でいられなくなり、無い身が震えるほどの恐怖と孤独に襲われたと伝わって来る。
厳粛な宇宙の営みを見た時だ。
宇宙の営みは生物、特に人間の身体の仕組みが模すような精巧さがある。
実によく出来ている。
奇跡のようだ。
号令がなくとも、それぞれの専門を連動し 進化進展する。
進むことを止めないのだ。
代謝とは進むことだ。
頭のいい彼は、数学的な感覚で分析。
知れば知る程、その精密な壮大さに恐怖と孤独で動けなくなった。
命は進むように出来てるのに、驚愕のあまり虚脱して止まってしまったのだ。
止まれば澱(ヨド)み腐るのに…。
大抵こんな時は、多少は怖くとも神秘性に感動するものだが、彼は違った。
彼は醜(ミニク)かった。
幾度も傷つきコンプレックスとなり、いろんな交流を避けた。
家族や仲間、便宜上のみのやり取りでも、交流というものがあれば、元々魂に備わっている愛が触発された時は感動となる。
だが彼は愛さえも怖がり遠ざけ、比べる必要の無いものを比べて、自己完結の分析のみで素晴らしき営みが巨大な化け物にしか見えなかったようだ。
愛も賛同も本当は欲しい。
でも等身大で勝負するには、あまりに恐怖だ。
誰しも不安はある。
不安をあおれば団結できる。
視点を自分じゃないものに向けさせて皆を集めるやり方。
化け物を倒せ。
大丈夫、オレがいる。
その呪文で皆の感覚を破壊する。
転生してソロモンとして物質社会に生まれおちても、このコンプレックスからの振る舞いは変わらず、返って強めていった。
break-addicter(破壊中毒者)へとなっていった。
破壊し、自分の恐怖を生まないように、あの手この手で再構築してみても、自然の営みの方向に戻ってしまうものだ。
彼は不毛な戦いが終われない。
偏った破壊の発生源として、彼自身が化け物と化してしまっている。
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