第34話
曽木が行った後、私は虚無からの強い脱力感と、焦げる程に燃え盛る怒りの二極化エネルギーを コントロール出来ずに、壊れた制御弁の赴くままに任せ、感覚ショートとバグりを繰り返していた。
その度に、他方の存在へと引っ張られる分量が少しずつ増えていった。
ある、吉方向に さらに陽を集める神事の際、滅多に鏡に触れない三代目が、気分がよかったのか、いい所を見せたかったのか、調子に乗って掲げようと、ガッと鏡を掴んできた時があった。
そのとたん、私の壊れた憤激のスイッチが入り、曽木に伝えたビリリとは別の、強い刺激が発動してしまった。
「ひいぃぃー!」と地べたに鏡を投げ放つ三代目。
「忌まわしい!今すぐ封じろぉー!」
と金切り声で命じ、すぐさま従官により下げられた。
土砂に叩き付けられても 破損しない強い鏡は、その日を境に布と行李に納め、社殿の奥深くに封じられ、二度と出される事はなかった。
この頃には 大国の意向より、上手くいってると錯覚している九州乗っ取りの方に、指針が向いていたせいで、鏡を軽んじる事に躊躇なかったのであろう。
私も その強いエネルギー放出の際に その鏡から離れ、二度と戻ることはなかった。
意志はない。
ただ薄く、
「大和(ヤマダ)の魂、尽きえた。」
と思っただけ。
もう 飾り巫女としての女王を、必要としなくなった瞬間でもあろう。
女王国から朝廷への流れだ。
近年 この鏡が発掘され、博物館に展示されているのを、写真で見せてもらう機会があった。
確かにこれだとわかった。
が、懐かしさも感慨も、何も湧かぬ不思議があった。
ただただ この記憶が妄想ではなく、確かに辿(タド)った軌跡だという実証を、また一つ見つけたに過ぎない凪があった。
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