第33話

曽木は、中枢部から離れたとはいえ 見るに見かねて心労が祟り、脳の血溜まりが弾けて亡くなった。

が、死に様は生き様。

ちゃんと最後は床(トコ)の上で、家族に見守られて逝った。


曽木が身から離れてすぐ、私は呼び止めて会うことが出来た。

日御子時代の装束と違い、白地に金糸の平紐を頭に巻き、衣は縛り無く光る白の私に、

「…日ぃ様なのですか?」

と、恐る恐る聞いてくれた。


言葉を交わせる喜びに感極まり、込み上げるものが多く、黙って笑って何度も頷いた。


国の惨状を詫びる曽木に、大きく首を横に振り

「全て見ておった。ご苦労であった。」

と、労った。

最敬礼で応える曽木。


「お供し、お護り致します。」

と、言ってくれたが、これにも大きく首を横に振り、

「魂の赴く処が相応しい処。そこには待つ仕事もあろう。

自らの動きに任せなさい。

吾はいつでも呼べばおる。」

と命じた。

命じなければ尽くしてくれてしまうから。

「行くのだ。」と強く。

これ以上、呪いの人生に付き合わせてはいけない。

もう二人とも涙。

せめてと笑って見送った。

直接労ってあげられてよかった。


地獄から解放された曽木を喜び、今後息災である事をただ願おう、今は。

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