第31話

曽木は何処?

と心配になり探す。


彼は三代目のSPから外れ、神事担当の臣となっていた。

私の犠牲になってしまったのか。

鏡を護ってくれ過ぎたせいなのか。


三代目は、鏡を上手く扱えず、自分の言う事をきかないものは全て

「汚らわしい!」

「忌まわしい!」

と、人でも何でも処分させるが、この鏡、元は魏からの大切なもので、大和の要の一つと位置付けられている為、無下にも出来ず、引き続き曽木が扱う事となり、神事担当に専念を任されたようだ。


出世の邪魔をしてしまった罪悪感が襲ったが、曽木は安堵しているように見えた。

それを見て、私と同じ気持ちなのかなと思った。


強引に暴走する大和を憂(ウレ)いても、滑走するかのごとき勢いを、忠の軸に軌道修正する事も出来ず、歯がゆく…。

ならば大和の魂だけは護ろうと。

私も精一杯に陽を取り入れ、広く民のすみずみまで行き渡るよう、術する事に専念した。


曽木は神事で無くとも鏡を覗き込み、触れたりする事が増えた。

その度に髪に白が増して感じ、せつなくなり、存分に癒しを送った。


互いに頑張ろう。

大和の魂が腐らぬよう、一途に行こうぞと、柔らかに包む光を発し続けた。


大和が九州に拠点を移した、本当の思惑を知るまでは。

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