第30話

祈祷と鳴り物。

平紐の締め付け。

例によりこれで目覚めたが、意識は薄い。

波こそあったが前々から、私はここに100%存在していない感覚があった。

どこか他にもちぎられ、留め置かれているような。

そっちの感覚を深追いしようとすると、押し潰されてしまうような、強い圧力が襲う。


波があるのだ、わかる時も来よう。

無理は禁物。

無理は祟る。


さてと、大和国は続いているのか?

ここは何処だ?

と探ると日田?

今で言う大分県日田市。

この名は飛騨から持ち込んだか、と推測。

私は相変わらず鏡の中。


ということは、大和国存続中か。

三代目日御子も設けられているのかな?と、やはり気になり考えていると、がなり、威張りながらドタドタと短足で、欲臣や従官をはべらせながら、部屋に入ってくる猪首女を見つけた。


もしかして、だったらヤダなぁと思っていたら、走り来た従官が、跪(ヒザマズ)き、

「日御子儀に置かれましては―…。」と やってる。


悪感は的中。

薄くなってるので、強い憤りこそないが、たっぷりの脱力感と呆れ。

誰の縁戚(エンセキ)をねじ込まれたのだと、失笑してしまった。


それにしても、三代目は機嫌があらかた悪い。

祀(マツ)り事より、政(マツリゴト)に興味があるようで、よく喋る。


ただ、周りも心得ている。

通したい事がある時は、喰わせて、持ち上げて。

とたんに機嫌がよくなる。

嘆(ナゲ)かわしい。

そんなに痘痕(アバタ)だらけになっても、まだ喰うか。


生き様は死に様。

その前に姿に出る。

私も、絶世の美女でも何でもないが、それにしても…と、小姑のようにダメ出しをしている自分に、やはり大和が大事かと笑った。

もう飾りとしても、求められていないのに。


三代目の素性は、まだよくわからないが、前世は…

比売大神(ヒメオオカミ)か。


宇佐神宮の一柱。

宗像三女神(ムナカタサンジョシン)のボスと考察する。


だから九州なのか…。

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