第29話

これ知ってる。

前にも見たな…。

この人、前にもこんな終わり方をしてる。

ヤマトトトヒモモソヒメノミコト。


彼女は、二代目日御子としてこの身を持つ前、大物主神(オオモノヌシノカミ)の妻であった。

まだ身を持たぬ頃、エネルギーだけで存在してた時の話である。


大物主神は、大国主命(オオクニヌシノミコト)と共に、国造りをしたとされる国津神(クニツカミ)の一人で、三輪山を造った後は、そこを拠点にしていたとされる神だ。


あくまでも「…とされる」であり、実際は自然に出来てる所に「って言うことで、ここにいてね。」と、逸話を既成事実とする為の立役者をさせられたに過ぎないと思う。


大物主神とモモソヒメは、三輪山で結婚生活を送っていたが、大物主神は、夜のみ、蛇の姿でしか現れない。


ある夜モモソヒメは、箪笥(タンス)から蛇の姿で登場した我が夫に驚き、尻餅をつき、箸で会陰を貫き絶命している。

(-箸墓伝説より引用-)


私達人間は、フィジカル(身体面)と、スピリチュアル(精神面)の両輪で、生命を運営している。

どちらに偏(カタヨ)り過ぎても上手くいかない。

そして物理原則により繰り返す。

嬉しいものばかりではない。

手を打たなければ、繰り返し続けてしまうのだ。

「そりゃ、そうなるでしょ。」と自然に。


彼女は、生きる事ごと否定し拒絶していた。

二度に渡って貫かれた会陰とは、チャクラで言うところのベースチャクラ。

命の根源みたいなツボだ。

そこを絶つ形での絶命。

死に様は生き様だ。


お気の毒さま、と思うと同時に、祈祷と鳴り物、平紐に支配されてる我が身に、地獄に似た光景を見せてくれた事案でもある。

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