第28話

ある日の夕げ。

二代目と侍女は、いつになく歓談を弾ませてた。

いつもならチュンチュンと少しついばみ、

「下げよ。」

と終わり、すぐさま膳を片付けさせるのだが、その日は済んだ膳をそのままに、談笑していた。


そろそろ下げようと侍女が立ち、二代目も厠(カワヤ)へと立ち上がったその時、若き従官が部屋に飛び込んできた。

緊急招集、新米で場所を間違えたようだ。


驚く三人。

特に二代目の、若き男の勢いに対する驚きはかなりのもので、小さく叫び、たじっと後ずさりをした時に、慌てて膳にかかと落とし。

その拍子に箸が立った。

そこへ、腰を抜かし尻餅をついた。

箸が会陰(エイン)を串刺し。


「ぎゃあぁー!」と、彼女からは聞いたことの無い程の大きな断末魔の悲鳴を上げ、身をくの字に横向きに倒れ、白目を剥き、泡を吹き、ビクビク痙攣している。


従官も侍女も「きゃー!」というより「うわぁー!」みたいな悲鳴を上げながら、部屋から駆け出て行った。

助けを呼びに行ったのかと思ったが、二人とも二度とその部屋に戻る事はなかった。


騒ぎを聞き、駆け付ける曽木。

絶命してもなお、痙攣をする二代目を見、その横を通り真っ先に、行李ごと鏡(私)を持ち出し、部屋を出ながら大声で知らせ、指示を出し…。

誰も彼女に駆け寄る者はなく、焼き葬り去られた。

終わりはいつも、呆気ないな。

ただ、興味をあまりにも持たれないのも悲しいものだ。


いずれにせよ曽木に任せておけば安心。

意識が薄くなり、眠った。

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