第24話

とにかく、人前に姿をさらすはおろか、側居(ソバイ)の侍女以外誰とも会いたくないそうだ。

どうしてもの重時(ジュウジ)の時にのみ曽木は謁見を許されたが、それ以外は誰にも。

これが後世「ヒミコ誰にも会わなかった伝説」の元になったのかなと今思う。


加えて、鏡は重いし火は怖いしで扱えないと。

神事の出来ない飾り巫女女王など、何の価値も無いのに。


曽木は困り果ててる。

力になりたい。

が、…歯がゆい。


曽木は、行李に納められて聖なる布に包まれた鏡(私)をあらわにしてくれた。

この鏡、女王以外は触れてはいけないもの。

私も幼き頃は、重さに苦労もしたが、頑張って掲げたり、準備や納めなどしたものだ。

その鏡に、ふと曽木は触れた。


-今だ!-


「曽木!吾はここぞ!吾はここにおる!」

力一杯呼んだ。


触れた曽木の手に、ビリッと電気が走ったようになった。


「はっ!」と驚き、手を見る曽木。

恐る恐る鏡を覗き込む。


今一度とばかりに、更なる渾身の力を込めて

「吾はここぞ!曽木!吾はここぞ!」と呼ぶ。


鏡の奥の奥に光を見つけてくれて、ぱぁーっと表情に明るさが戻る曽木。


通じた!

受け取ってくれたのだ。

嬉しい。


「日御子儀ー!」と大声でモモソヒメを呼ぶ曽木。

「神事は御簾(ミス)の奥でなさいませ。火や鏡は私が扱う形を取りましょう。」とアイディアが出る出る。


こうして多少の式辞変更で儀式は行われ続けた。


そういえば、ビリッとした翌日、曽木は父親を連れて来て鏡を見せた。

翁父が不思議そうに恐々と覗き込む。

「翁父よ!吾はここぞ!」

と呼ぶ。

「はっ!」と翁父は光を捉えてくれた。

曽木が、ね?言ったでしょ?の顔。

嬉しくなり、思いっきり

「吾はここぞ!!」

と続けて呼び、大きく伝えすぎ、行李に納めてある神事の鈴(リン)を、私のやり方で鳴らしてしまった。

「はっ!」

と鈴の行李の方を見る二人。

顔を見合わせた後、翁父は

「おぉ…!」と涙してくれた。

曽木も

「ここにいらっしゃるんですよ。私がお護りします。」

と泣いてくれた。


また曽木とともに国営の一端を担えるのだな。

ならば鏡の中も悪くない。

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