第23話

祈祷と鳴り物が響いてきた。

欲の塊達は、まだ私に用があるというのか。

白地に金糸の平たい紐(ヒモ)が、こめかみをギリリと締め上げる。

以前天空にいた時も巻いていたと思う。

だがこんなにもこの紐が存在主張をしたことはない。

芽吹いた鼓動に宿りに行く感じではなく、無機質な物に鼓動を与えに行くように、すぅっと吸い込まれ、着された。


どこだ?

と、はみ出てみると、行李に入った かつての我が相棒である鏡の中だ。

大和国は存続していたのか…。


ここは?

と、さらにはみ出て感覚を伸ばすと飛鳥。


何故だ?

などと考えていると、高いが覇気の無い、小さな拒絶の声。

曽木を困らせている。


息災(ソクサイ)であったかと安堵した。

が、曽木は元気が無い。

困らせられているからではない。

任務だから従じているが、気が乗らないというか、主君を尊敬しかねるというか、とにかく命が躍動してない。


か細い声の鶏ガラ女に、ピタッと寄り添う侍女。見ない顔。

「無理じゃと仰せですっ。」と癇(カン)に触る声だ。


「せぬ!」と細いがキッパリ言い捨てると、社殿から早い摺(ス)り足で出ていく鶏ガラ女。


「日御子儀ー!」と叫びながら、後を追う侍女。


…日御子?あれが?


あぁもうつくづく誰でもいいんだなとがっかりした。

生命を一旦終え、身から離れると、執着やこだわりなどはずいぶん薄くなるものだ。

それにしても、これには呆れた。


肉体の美しさとは、筋肉の抑揚が醸し出すものだと思う。

しかしこの二代目日御子さん、抑揚どころか骨に乾燥肌の味気なさ。

とうもずいぶんと立ってるような…。


孝霊天皇の娘

倭迹迹日百襲姫命

(ヤマトトトヒモモソヒメノミコト)だ。

だから飛鳥か。

利権が動き、ねじ込まれたな。

私が最期になる前から話しは出ていたのだろう。

扱いやすいんじゃないかと。


ネットはおろか、新聞や写真の無い時代だから判らないとはいえ、衝撃的に呆れた。


魏には、つつがなく存続している報告をして、引き続き旨味を得ていた。


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