第21話

死んだからといって、すぐさま何かが変わる訳ではない。

身と魂、精神を繋いでるものが無くなるだけだ。

高血圧の人は死んでもなお、なぜか身から離れづらくなり、荼毘に伏すのに間に合わなくなりかねないので、注意が必要だ。


まさに死に様は生き様。


どんな風に生きたか…私は嫌いなものに奪われる生き方、加えて邪魔になれば一旦削除の運命(=呪い)とともに生きていたのだな。


私は身から離れても続きをしてる。

奴らのやり口は知っているからこそ止まらない。

「無かった事にする」だ。

私はいい。

でも大事なものに対して、させてたまるか。


私は村に向け、天空を飛んだ。

案の定、火の手が上がっている。

皆と実りを喜んだ畑も。

まあいに読み書きを教えた土手も。

野に逃げた者は役人に殺されていたが、シンボの家族などは、忍びの部下が引率して藪から山へ、その後は小隊に別れそれぞれに案内され、まだまだ逃げている。

…ホッとした。

曽木の見越した指示に感謝がわく。

最低限の荷物だけでも重かろうに、あのおにぎり翡翠の勾玉も持ってきてくれている。

私の古衣で作った布わらじもいくつも束ねてぶら下げて…。

まあいも朱糸飾りの紅珠や、献帝から複数もらった香り袋を「お揃い」と分けて上げたものを懐にしまい、悲しみが込み上げるとそれらを握り、一所懸命逃げてくれた。


近年思わぬ各地で、おにぎり翡翠勾玉が出土され、史料館などに展示されていたりするのを知り、それぞれ様々に逃げ延びて営み続けてくれたのだと受け取り、嬉しかった。

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