第16話
そして、あの信を持つ担当臣と曽木からのサプライズがあった。
謁見の間に曹操をはじめとする嫌な面々はいなかった。
またも段下に座らされ、負けじと凛と顎を上げた。
廊下より、重厚だが上品な足音。
私以外が頭を下げる中、御仁は来た。
御簾の冠の御仁は、落ち着き温かく私を見た。
顔をよく見せろと言われたようで、臣に促され私も御仁をしっかり見た。
その時の私は知るよしもないが、その御仁は献帝劉協、私の真の父親だ。
曽木と信の臣からのプレゼント。
献帝から請われたのかも知れない。
笑顔ではないが、愛煽るる瞳で私を見つめてくれている。
一瞬で心許した自分を、後々までも不思議に感じたのを覚えている。
様々な物を用意してくれていた。
色とりどりの衣、宝石、菓子、飾り箱…。
「うわぁ…。」と心躍り、思わず声が出た。
御簾の冠を取り、献帝も段下に降り、土産物の前で「こちらにおいで。」と手招きした。
私は近くに行き「はぁ …。」と夢心地のため息。
小さな菓子を一つ、私の口に入れてくれた。
児を児のように扱ってくれる優しさ。
甘く香ばしく、目を閉じ味わい、にっこりと御仁を見た。
御仁も信の臣も曽木も、瞳がうるうる光っている。
私を大事に思ってくれている人が一人、また一人。
幸せとは条件じゃない。感覚だ。
まさにこの感覚。
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