第12話

戻った後、神通川の傍でよく採れる翡翠(ヒスイ)で、おにぎりのような勾玉を作り、民に礼として贈るよう曽木に命じ、交流を続けた。


心ほどけた帰り道に咲く梅花空木(バイカウツギ)もまた私を癒した。

群生場所での休憩をねだり、いつも存分に楽しんだ。

甘やかな香りに可憐な白い花がたくさん。


…これになりたい。


転生があるなら次はこれになりたいと、時を忘れて浸った。


いつか曽木が「持ち帰らせましょうか?」と聞いてくれた。

私は悩みに悩み、断った。

「ここにおる方が無邪気であろう。」

曽木は瞬時に私と重ね悟り、「出過ぎました。」

と一人にしてくれた。

花の中で私もまた自らの人生の悲しみを強制自覚する事となり、一段と強くなった。

負けないと誓った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る