第10話

そしてもう一つ、私の大好きな場所、民の村だ。初めて曽木に輿で村に連れて行ってもらった時、民家に案内された。

夫婦揃って土間に額を擦り付け身を固くし出迎えてくれた。


侍女が用意した重ね緋衣を床に敷き、私は窮屈な靴を脱ぎ、上がった。

働き者の手や背が一層固くなり震えている。

「いつもの様でよい」

と曽木が笑い和ませるが更に土間に額を擦り付ける二人。

「面を見せ」

と呼び掛けると、恐々上げた額が土だらけで…それはもう本当に愛おしく、私が心血注いだ大和の姿を見た思いがし、七つの私も身が引き締まった。

そして真の敬意を貰い、感極まった。

自分は正しかったのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る