子供達の国


草原を走る、小さな車がいた。その中にはツインテールの少女と灰色の猫がいた。

「サクラ、流石に今回は好奇心でしょ?」

サクラと呼ばれた少女が返す。

「まあ、否定しないわ。気になるもの。私と同じくらいの子供達しかいない国なんて。シロは気にならないの?」

「気になる以外の選択肢あるの…?それ」

彼らは、その先にある国目指して走っていた。間もなく城壁が見えてきていた。


「僕らの国に入国しますかー?」

対応にでた入国審査官は、サクラとさして変わらぬ年齢であろう少年だった。サクラが頷くと、どうぞーとあっさり通された。


国内はパッと見た限りではそれほど変わっていなかった。異様なまでに科学の発達した国ではあったが、そんな国をこれまでも見てきたサクラとシロにとってさしたる話ではなかった。しかし、目に飛び込んで来たのは、異様な光景だった。


町中を歩いているのが少年少女しかいないのである。


「サクラ、この国は子供が大人の代わりをしてるのかなー?」

「だとしても大人がいなさすぎる…。子供がクーデターでも起こしたのかしら…?」

「流石に無いかなー。」

その後、サクラが訪れた武器弾薬や燃料の店、或いはレストランですら店員全員が少年少女だった。当然ながら二人は不思議に感じてはいたが、ひとまずスルーしてホテルへと向かった。


ホテルで彼らを出迎えたのもまた10代後半の少女だった。

彼らはその少女に部屋まで案内された。途中若干咳込んでいた為、

「あの、大丈夫ですか?」

サクラは思わず聞いてしまったが、

「大丈夫ですから…」

少女は苦しそうにしながらも穏やかにそう言ったので、サクラとシロは疑問を感じつつも取りあえず部屋に行くことにした。


翌日、ホテルのロビーに来たサクラとシロが見たのは、


昨日の少女が倒れているところだった。


ドタバタと外から医療班…これも少年少女ばかり…があっという間に乗せていった。

サクラは近くにいた少年に声をかけた。

「あの少女は大丈夫なの…?」

「はい。恐らく病棟へ連れて行かれるでしょう。残りの生涯はあそこで安全に暮らします。」

サクラは首をかしげた。

「んー?もう外へは出れなくなっちゃうのー?」

「はい。彼に限らず我が国の国民全員がそうなんです。あ、もしかして、旅人さん達は聞いておりませんか?」

「そうです…教えて頂けますか?」

「教えて教えて!」

「はい」

そうして少年は口を開く。


「我々は動けなくなるのです」


「それは…どういうことですか…?」

「そのままの意味です。我が国の国民は体を動かす力が極端に少ないんです。小さな子供のうちはそれでも動かすことは出来なくも無いのですが、20歳前後で体が動かせなくなります。動けなくなった人は病棟に連れて行かれ、残りの人生をそこで過ごすこととなります」

「なるほどねー。それで、病棟かー」

「他国に助けを求めようとしたこともありますが、旅に出られるほどの年齢となったものは間もなく動けなくなってしまい、誰も使者として送ることが出来ません。それで諦めました」

「…それでは、どうやって国を存続させているのですか?農業や商業はともかく、子孫を残せないと思いますよ?」

「我が国は元々医療が発達している国です。数十年前に旅人の医者が伝えたそうです。なので、無理矢理ではありますが人工授精を使って子孫を作っています」

「へー。じゃあ君もだねー」

「はい、そうです。…こんなことをしてまで国を存続させるべきなのか、というのが何度も議論されて来ましたが、結局自分達が今存在するのはかつての人達が人工授精をしたからです。なので、反対派もそこを付かれると

何も言えなくなり、続けています。我が国はこれからもそうするでしょう。この国を滅ぼさない為に」


シロがもう一つ質問する。

「あれ?じゃあその旅人のお医者さんが来る前はどうしてたの?」

少年が答える。

「そのお医者さんが原因なんですよ…。そのお医者さんが科学技術をこの国に齎して、国民皆が使ううちにどんどん動かなくなっていって…体を動かす機会が減った為にこうなっているんです…」

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