その63 たまにはゆっくり
――翌日、ちょっと時間がかかりそうなので、エルフ村からオーガ達のところへ行ってから一泊し、その後ドワーフ村へ向かう計画にしたのでホームセンターとペットショップへ買い出しに行っていた。
「肥料どれくらい買います?」
「ドワーフ達のところも撒くから大量に仕入れよう。って結構少ないな?」
「最近、家庭菜園が流行っていますからですかね? ボク達は本格的ですけど!」
「いや、あんなに急成長はしないし、収穫量もおかしいからな? とりあえず種はエルフ村と同じやつでいいか……下手に違うものに手を出して失敗しても嫌だし」
俺と黛はカートに肥料を積み、何度か車を往復する。
軽バンなのでシートを倒せば結構積載量はあるので、エルフ村の2.5倍くらいの肥料、トマトや大根といった種と工作用にノコギリやトンカチといった道具もいくつか購入しておいた。
「またキャンプ道具?」
「ああ、いいツインチェアがあったんだ。夜、焚火の前で並んで座れるぞ! それとテーブルにガスバーナーにランタン! 後はスーパーで肉を買えばいいだろ。野菜はエルフ村で採れるしな」
「おお……夜二人で並ぶ……ロマンチックじゃないですかー、やだー、先輩好き」
「なんか安い感じがするからやめろ……それじゃ、次はペットショップだな」
「はーい!」
ドワーフ達の家は流石にしっかりしていたけどオーガ達の家は結構どれを見てもボロボロだった。長屋みたいになっていたから、エルフ達を連れてログハウスを作ってあげたいところである。
やりすぎな気もするし、お金が勿体ないというのは頭の片隅に引っかかっているのは確かなんだが、実家住まいのサラリーマンほど貯金がある人間は居ない。なので、いつでもキャンプを楽しめる島として是非改善をしたいと考えていたりする。魔物がいるので、戦える人を作るというのもあるかな?
「あ、ボクはお魚も食べたいですね」
「そういや海辺ってどうなってるんだろうな。ひと段落したら行ってみたいな」
「夏になったら水着とかをもって泳ぐのもいいですねー。って四季はあるんでしょうか」
「さあな、気候がいいからそういったのは無縁かもな。っと、コテツ達の餌を買わないと」
危うく通り過ぎるところだったと車を慌ててお店に入れて、ペットショップへと赴いた。
「いらっっさいまっせー」
「おや、いつものお姉さんは居ないのか」
「ああ、あの子は今日休みでしてね、学生さんだから」
「む、浮気はダメですよ?」
「違うよ!? いつもの人が居ないとちょっと気にならない?」
「それはあるかも」
というかネーラとフローレは良くて店員さんはダメって、なんでなんだろうな? そのあたりを聞いても教えてくれないんだよな……
「今日はなにがご入用で? たまに奥からお客さんが来ているのを見てますからこれでっすねえ」
「分かっているなら何故質問をした……? ま、まあ、それだけど。それとなんだっけ、猫が高いところに登るやつ。それをもらえるか?」
「ああ、キャットタワーですかいね。ほならそれも出しときましょ」
独特な喋りをする眼鏡のおじさん……店長さんだろうか? 彼にキャットタワーを出してもらい、おまけで爪とぎももらった。
コテツとキサラギもすっかり元気になり、ミルクから離乳食にもなり、おもちゃでも遊ぶようになった。
次は、ということで高いところを慣れさせる意味でのキャットタワーというわけ。
異世界で元気に走る回るので体力的には問題ないけど、抱っこかシュネの背に乗っているかのどちらかなのでできれば昇り降りも体感させてやりたいと思った。
「まいどありぃ」
「どうも」
結構な金額を使ったので、おじさんは嬉しそうに見送ってくれ車へと戻ると、黛が後部を見て口を開いた。
「結構な荷物になりましたね。運べます?」
「ネーラに荷車みたいなのが無いか聞いてみるか? 庭の物置に台車はあったはずだけど」
「シュネに頼むのもありかなあ。肥料はちょっと重いです」
「ああ、俺の力は向こうだと強いからそこはまあなんとかなるだろ。さて、ちょっと遅くなったけど昼飯にするか――」
そんな感じで、デート兼買い出しを楽しみ、
「みゅー!!」
「みゃーーん!!」
「あはは、凄く気に入ったみたいですよ! 途中にある小部屋がいいみたいです」
子ネコ達と遊んでいたら一日が終わった。ま、まあ、急ぎじゃないしいいか……?
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