その44 第三者からの疑問


 「ふああ……」

 「みゅー♪」

 「みゃー!」

 「あれ? なんでベッドに……あ、いや違ったな」


 俺は胸に乗って来た子ネコ達の背中を撫でながら昨晩のことを思い出す。コーラやお酒は無かったので酔っぱらいは出なかったけど、三人とも泊るというのでそれぞれ配置したのだ。

 黛は俺のベッドで、ネーラとフローレは親父たちの部屋にそれぞれ布団を敷いて寝てもらった。で、俺はソファに寝転がってそのまま寝た。

 ……黛が夜の営みならいつでもいいですよと言っていたけど、流石にエルフ二人が居る中でそんなことをする気は無い。


 「ミルク飲むか? んー、腹は減ってないな……食い過ぎたか」

 「みゅー」


 台所でミルクを作っていると、キサラギが我慢できないのか俺の足をよじ登り一声鳴く。俺は少し感動してキサラギを摘み上げて肩に乗せる。


 「お前すごいな、太ももまでよじ登るとは思わなかったぞ。こりゃ、黛の言う通り餌も変えないとな」


 最近、特にミルクを要求してくるあたりもしかしたら物足りないのかもしれない。またサンドムーンさんのサイトにお世話になるかと思いながらミルクを二匹に飲ませていると、黛が二階から降りてきた。


 「あふ……おはようございます……先輩……あ、え、えっと、住孝、さん?」

 「急にそんなことを言うと逆に恥ずかしいだろ……慣れるまで今まで通りでいいだろ? ……真弓」

 「~っ! もーもー! ずるいですよ!」

 「はいはい、俺が悪かったよ」


 顔を真っ赤にしてポカポカと俺の肩を叩く黛を見て、まさかこいつとなあ……と胸中で苦笑する。


 「ねー、コテツ。お前のご主人様はいじわるですねー」

 「みゅー?」

 「コテツにあたるな。腹は減ってるか?」

 「いえ、全然です……飲み物だけもらえますか」


 俺はお茶をコップに汲んで手渡すと、一気に飲み干し一息つく。


 「ふう……それにしてもエルフって凄いですね。実は馴染んだように見えて結構ドキドキしながら話してましたよ、ボク……」

 「そうだったのか? フローレとは仲良さそうだったじゃないか」

 「そりゃ悪い人達じゃありませんからねー。気になることは色々ありますけど、とりあえずエルフ村に行ってみたいです」

 

 黛が微笑みながらそう言うと、今度はネーラとフローレも起き出し、リビングが再び賑やかになる。


 「スミタカ、マユミ、おふぁよう……」

 「おはようございます! 昨日は三人で楽しかったですねえ」

 「誤解を招く言い方をするな。飯は食えそうか?」

 「ううん、全然食べれそうにない……というか胸やけしてるわ……」

 「おお、早く言えよ。フローレもあんまり食えそうにないって顔してるし、スープでも作るか」


 俺は適当に鶏ガラスープと卵を使って簡単なスープを作ってやる。人数分のカップはないので俺はどんぶりだ。


 「あ、美味しい」

 「良かった、口に合うみたいだな。それ飲んだらエルフ村に行くか、野菜の状況を確認したいし」

 「そうですね。豊作だって聞いているからボクも手伝います!」

 「新しい野菜も食べてみたいですから」

 「お前、食ってばっかりだな太るぞ」

 「うぶ……!?」


 カップを持つ手がピタリと止まり、フローレのお腹をつまむネーラ。慌ててネーラを引きはがし、顔を赤くして……自分のお腹をつまんだ。


 「だ、大丈夫……のはずです……」

 「まあ、元々お前達は痩せてたからそんなことは無いって。それじゃ、用意していくか」

 

 黛は動きやすい恰好で来ていたのでそのまま行けるだろう。一応、虫よけスプレーやバットを持たせておけば運動神経のいいこいつなら問題ない。俺は向こうでは力が強いから守れると思うし、シュネも居るからな。


 「よし」


 勝手口に鍵をかけたのを確認し、エルフ村へと歩き出す。ネーラは弓矢で武装しているがフローレは何も持っていない。確認したところ魔法を使うからいいのだそうだ。

 するとバットを肩に担いだ黛が振り返り、俺の家を見てぽつりと呟く。


 「……そういえば鍵はかけていますけど、二階の窓とかは無防備ですよね? 桜の木もあるし、魔物とかが壊したりしないんですね」

 「そういえば……」


 そうだなとハッとする。

 ネーラ達は庭まで踏み込めているし、他にもあの狼みたいな魔物がウロウロしていてもおかしくない。

 だが、家屋にダメージを負った気配は無いし、庭も荒らされていないなと今になって気づいた。


 「一度、庭でバーベキューでもしながら様子を見るのも面白いかもしれないな」

 「あ、いいですね! あ、村が見えてきましたよ」

 

 はしゃぐ黛が声をあげ、前を見ると村の入り口が見えてきた。……が――


 「何か人だかりができてないか?」

 

 そう、村の入り口にたくさんの人が集まっていたのだ。知らない顔もいるようだけど……?

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