赤点

「よし!このままいくぜ!!」


俺は日本史のテストに手をかける。


「おらーー!」


「いえーーーい!」


「ひゃっほーー!」


うるさすぎである。


「ぺらり」


「……三十二!!」


「キャー!」


「ふぉーー!」


「来たぜおらーー!」


「いや~、ちゃんと勉強できてなかったからね。よかった」


「ほんとね。駄目かと思っていたわ」


三人とも目をランランと輝かせ、夕方なのに深夜テンション突入である。


「はい次ーーー!」


世界史のテストを躊躇なくめくる。


「はい三十四!!」


「きたー―!」


「バンザーイ!」


「はい次ーー!」


今度は理科一気に三枚と国語!


「いっくぜーー!」


「いったれーー!」


叫ぶ武田。

顔をブルンブルン振っている。

俺はテストを捲る!!


「化学三十四!!物理二十八!?生物二十六?国語十八……」


俺と武田と木下の顔が一気に曇る。

表情筋が上がらなくなった。

そんな中、武田は我にかえると(というか俺らの反応に付き合ってくれていただけかもしれない)、


「いやまぁ、そらそうなるでしょ」


「まぁ、そうね。国語なんか特にわかりきってたわよね」


「……」


武田は俺の肩を叩きながら


「まぁ、次頑張ろうぜ!」


ニカッと笑顔をみせる。

なんか元気出てきた。


「とりあえず、また一か月頑張りましょ!」


木下も笑顔で声をかけてくれる。

よし、あと一か月頑張ってやるぜ。


「じゃあ、二人ともこれからもよろしくな!」


「うん」


「ええ」




「というわけで何とかなったわけだ」


そういうと中西は


「よかったね。山下君」


と微笑む。


「いやぁ、ほんとよかった……」


「私は結構よかったんだ、、、今回のテスト」


「お前、勉強できるタイプ?」


「うんそれなりにね……」


「へー。いやまぁ、俺よりできない奴なんてほぼいねーもんな。今回も奇跡みたいなもんだし」


「奇跡なんてことないよ。山下君頑張ったでしょう?」


「おお、そうだな」


「それは、実力っていうんだよ」


と中西に優しく言われた。

そうか、これが実力か。

たいしたもんではないけれど。

小さな一歩であるけれど。


俺は実力を手に入れたのであった。

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