一夜漬けってよくないけど多用しちゃうよね

「ていうかお前、本読むって余裕だな」


「息抜きで読んでるんだ」


「読めてねーけどな」


「何を言う。もう十二ページだぞ」


「いや、十二て」


武田は笑う。


「いや~、俺には向いてないんだよ。元々文章の羅列が嫌いで勉強してなかったりもしてたしな」


「ふ~ん。そうなのか。俺なんか小さい頃から読んでたからな。読めるのは当たり前なんだ。よく分かんねーんだ」


「ほう、お前自慢か?」


俺は眉を片方吊り上げ、応える。


「はは、お前にする自慢なんてないさ」


舐められている。

まぁ、底辺を生きてきたからな。


俺は自己採点は厳しい方だった。


「でも、人はそうそう一面でははかれないもんだ。多面的どれだけ見れるかだな。いつも見れないけど」


そう武田は苦笑する。


「そうか。そんなもんだろ。一面で考えた方がわかりやすいしな」


本当はそうは思わない。

でも、それは言うべきではないと思った。

話が長くなる。

長い話は苦手だ。

そんな頭は残念ながら持ち合わせていない。


「しかし、十二ページ読めたんだろう?これからどんどん面白くなるよ。頑張ってよんでいるうちは面白くわぁないよ」


「へぇ、それじゃあいつ面白くなるか分かったもんじゃないね。それを楽しみにしつつ読むよ。何事も楽しみが大事」


「そうだな。中間テストも楽しめよ。じゃあ勉強再開するか」


楽しめたら苦労しねーよ。

その言葉を飲み込んだ。


黙るっていいな。




「いい感じじゃない」


そう、木下は笑顔になる。


「おう。もう明日だからな」


「じゃあそろそろ寝ましょうか」


「おう、、、って早くないか。お前もまだ帰ってないし」


「え?言ってなかった?私今日泊まるけど」


何考えてんだこいつは。

寝れなくなるじゃねーか。

明日テストだろ。


「聞いてねーよ」


「そう」


「そもそもなんで泊まるんだ?」


「それはね。あんたをちゃんと管理するためよ」


「はぁ?」


管理?

物騒だ。


「あのね、前日は一番大事なの。ここで全てが決まるの。ちゃんと寝ないと私達の努力が水の泡」


木下の顔はいたって真剣である。


「言いたいことは分かったが……早く寝るよ?普通に。そこまですることじゃあない」


「こっちが心配なの」


木下はフグみたいになった。


殴られる前に寝よう。



明日に俺は全てをかける。

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