戦いの準備と心構え

「さて、山下君。テスト勉強を始めましょう」


武田にそう言われた。



中間試験である。


「テスト期間は一週間。それじゃあ間に合わない。今から始めるぞ」


二週間前だ。


「学校が終わったらすぐ帰って勉強。ナンパは禁止だ。だいだい普段からもやめて欲しいんだけどな」


「まじかー。まぁでも今のところナンパは必要ないな」


「そうなのか?」


「おう」


「なんか楽しそうだな」


「いいだろ」


「ふ~ん」


武田は興味なさげだ。


「とにかく、お前はこれまで経験のしたことのない、ん~まぁ大変だぞ」


「最後投げやりな」


言葉は確かにふざけてはいたが、表情そのものは真剣だった。

妙に身が引き締まる。


「ま、そう固くなんな。俺が、俺らがついてるから大丈夫。学年は違っても友達だぜ」


「いや、もう留年する前提で話が進んでるじゃん!中間テストで留年は決まらないが?」


だが、実質初めての中間テスト。

恐ろしいものである。

だが、怖がってばかりはいられない。

いや、退学を二回経験した人が何言ってんだよ。


「やるか」


武田が笑顔で応える。

はぁ才能欲しい。




「お前なぁ、ナンパは駄目でも喧嘩はいいと?」


「いや、それは向こうがうってきたしな。それに問題にはなってはいない」


俺の顔には傷がいくつもできたいた。

男の勲章である。

武田はそれを不名誉だと言わんばかりに見てくる。

分からんかな~。


「喧嘩両成敗っていう言葉があるんだが、わかんないか、、、」


確かによく聞く言葉ではあった。

武田のような凡俗な人間にはピッタリだな。


「それはどっちが悪いか決めることができない人が使う、都合のいい言い訳にすぎない」


「ほう、そう考えるか……」


武田は少し思案するような顔をして、すぐに砕けた顔になった。


「いいんじゃね?だとしても今回悪いのはお前だよ。色々背負ってるもんが、喧嘩なんかすんな」


なるほど、喧嘩なんかは何も背負ってないもんがするものか……

俺は、高校生活を背負っていると。


「ぶん投げたいな~」


「それで二回退学だろ」


返す言葉もなかった。


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