料理は計算
「料理できるって凄いね」
俺が料理の準備をしていると木下はそう言った。
「はぁ、お前できないの?」
愚問ではあったが、聞いてみたくなった。
「ええ。キッチンには入るなって言われてるわ」
「へぇーお前勉強と暴力しか出来ないのな」
「うるせー!」
「ごはぁ」
殴られた。
そういう所だぞ。
「と、とにかく料理してみね?」
「え?」
「料理してみね?」
俺は劣等感の塊である。
勉強はできない、仕事もしてない、何度も高校に通う。
こんだけあれば十分だろう。
そんな俺にとって何かを教えるというのは物珍しいのであった。
「あんた後悔するわよ。あんたみたいに勉強できなくても被害はでないけど、料理音痴は死人がでるわ」
「死ぬの?!だとしたら俺が死ぬじゃん」
「まぁね。私をキッチンに入れるというのはそういうことよ」
「なんとかなるだろ」
とりあえず、準備を終えて考えてみる。
「今いうのもなんだけど、あんたってたばこ臭くない?」
「おう」
「おうって、、、吸ってるの?」
「おう」
「駄目じゃない」
「それは武田にもいわれた。回数は減らしたよ」
「今すぐ辞めなさい」
「簡単にそうできたら苦労しねーよ」
「やめなきゃ殺すわよ」
「本当に死人がでそうだ!」
まぁたばこはいずれ完全にやめるつもりだ。
俺は依存するタイプではないのだろう。
今でも吸っているのはなんというか、気分?だ。
じゃあ今すぐやめろよ。
「で、何作るの?」
「今日は、お客さんがいるからな。焼きそばだ」
他にあった食材はこう、なんというか……
「お客さん?」
なんなのお前この家の住人のつもりかよ。
「お客さんがくるの?」
「いや、お前のことな」
「あぁ、そうだったわね」
「よし、じゃあキャベツ切ってみるか」
キャベツならなんとか切れるだろう。
包丁を使わなくてもどうにかなる。
「包丁……持ちたくないわね」
「せめて一回は使おうぜ」
「はぁ」
包丁を握らせる。
なかなか切ろうとしないので、手を添えて
「ほら、こうやって切るんだよ」
と、教えてやる。
「ちちょっと、あんた」
普段なら触れるだけでぶん殴られるのだが、包丁を持たせているからだろうか。
なんか面白くなってきた。
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