息抜きというもの

「あんた昨日二時間で勉強辞めたら、もうやめるの?って言ったらしいじゃない」


「おう、自分でも信じられねー」


「まぁそうやって頑張るのは良いけれど、息抜きも必要なの。今日はそれを教えてあげる」


「はぁ、俺なんか息抜きばっかの毎日だったからな〜」


「それは息抜きとは言わないわよ」


「で?どうすんの?」


「とりあえず勉強ね」


「息抜きとは……」


そうして二時間の、地獄の授業が始まった。


「はいここ!テストにでるから〜」


「いや、なんでわかるんだよ!!」


「いーやだいたいこんなのはわかるでしょ」


「わかんねーよ」


「あんたねぇ、単元の公式よ?絶対でるじゃん」


「そうなのか?!」


公式……久しく聞いてない名前だな。

そうか、確かに公式は出やすいのか。


「じゃあ簡単じゃん」


「あんた今なにをもって簡単と言ったの?」


「え、出るところわかるんでしょ?」


「もちろんそうだけど、確定じゃない所もあるし大体量が多いのよ。それに難しいしね」


「そうなのか」


「あんたさっきから聞いてると、なんで勉強しなくなったかわからなくなったわ」


「面倒だから?」


「そうでしょ?その原因が難しいと量が多いなのよ」


「いや、なんかなんとなく面倒だっただけで、内容とか全然みてないから難しいとか量が多いとか、どうでも良かったけどな」


「えー、そんな理由で勉強やめたの?」


「大体小学生からほとんど勉強してないからな。勉強をやめたというより、やってないと言った方がいいのかもしれない」


「理解できないわね。勉強しなかったら将来どうなるとか考えなかったの?」


呆れ顔で聞いてくる。


「いや、あてはあるんだ。だからもう高校なんて行かなくてもいいんだけど……せっかくだし、ね?」


「あんたみたいなのにあてが?世の中わからないわね」


俺もそう思った。

ほんと、人脈大事だよな。


「まぁお前らがコツコツ勉強している間に、俺は知り合いを沢山つくったからな。俺だって努力?はした」


「努力?ってなによ。はぁ、良いわね。あてがあって」


「そんなに良いことか?俺は自分がわかんないことがわかるお前の方が良いと思うぞ。わからないってのは替えが効かないからな」


「あれ、あんたって馬鹿キャラじゃなかった?」


「たまには良いこと言わせろよ」


そうしてまた勉強を始める。

無論、サボろうとするのだが木下がそれを許さない。

自分も卒業したいし、気持ちがそっちに向かっているのだろう。


「はい、これで終わり」


おー終わった。


「そうだお前、飯食ってく?」


実は昨日武田と飯を食ったのだった。

武田曰く


「うまいな」


だそうだ。


「あ、それ俺作った」


って言ったら


「おぇ、気持ち悪っ」


勿論全部作ってない。

家事の手伝いは高校に行かせてもらう代わりに両親が俺に科したルールだ。


まぁ良い息抜きなんじゃね?

それは違うか。

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