恋人
春がやってきた。桜が咲き誇り、道に桜のじゅうたんを作り出す。桜の吹雪が、天から舞い落ちる祝福のように見えた。
晴れて、小柳と真柴は恋人同士になった。
と言っても、あのクリスマスイヴ以来会っていない。冬休みだったため、メールはしたが直接会う機会はなかった。
小柳はひとり、あせあせする。久しぶりに会ったら、思いっきり照れてしまうかもしれない。道中、ずっとそんなことを考えていた。
「おはよう、竜馬」
「え?竜馬?」
いきなり下の名前で呼ばれたと思ったら、真柴だった。下の名前…、恋人っぽい!
「あれ、下の名前、竜馬だよな?」
「う、うん。おはよう…、と、と、と、透」
「はは、動揺しすぎ」
お前は動揺しないのかよと一人文句を言って、そのまま学校に行った。
「そういえば今度さ、お前んち泊まっていい?」
「え!?」
また夏休み前になると、真柴はそんなことを言ってきた。小柳は、またひとり焦っていた。小柳の家に真柴が来ることはあった。でも、泊まることはまだなかった。そう、俺たちは未だ童貞・処女を卒業していなかった。
「あれ、ダメだったか?」
「う、ううん!そんなことない!大歓迎だよ!」
「そっか、良かった。じゃあ、今週の日曜日でいいか?」
「今週!?そ、そんな早く…?」
「?」
「いや、いいよ!分かった。今週ね?」
「よし、決まり!」
小柳は家に帰ってから、一人になるといつも自分と真柴がヤっているシーンを想像してしまう。そんな変態な自分が嫌で、バイトに専念して店長に気味悪がられた。
そうして日曜日がやってきた。真柴は短パン、半そでTシャツでやってきた。別に、そうゆうことをするためではないが、両親にはバイトで貯めたお金を渡し、旅行に行ってもらった。ごめん、母さん、父さん。
「あれ、ご両親は?」
「あ、えっと、旅行に行ってるんだ」
「…そうか」真柴の顔が赤くなった。
まずは、小柳の部屋で勉強。真柴は勉強も運動もできるが、小柳は運動しかできなかった。いっつも赤点すれすれ。今日は、念願かなって恋人に教えてもらえる。
それが終わると、近くのコンビニでアイスを買って食べた。ひんやりして気持ちいい。
そして、すぐに夜がやってきた。
「先、風呂行くか?」
「あ、どうぞ、先入ってください」
「いや、なんで敬語?」
「な、なんとなく」いいえ、違います。ただ一緒に風呂に入りたいけどなかなか言い出せない、気弱な変態です。すみません。
すると、真柴は少し考えこみ、訊いてきた。
「小柳は、俺とそういうことしたい?」
「…え?」
「だから、その…、エッチなこととか…」
「…し、したい」
男と男がエッチするかしないかの話で赤くなる図だなあ。
「じゃあさ、一緒に風呂入ろ」
「え、一緒に?」
「いや、ほら、風呂エッチってやつ?」
小柳は小さく頷き、真柴について風呂場に行った。
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