告白
「おはよう、真柴。この前はごめんな、手振り払って。ちょっと家のことでイライラしてたんだよ。八つ当たりだった。ごめん」
小柳の言葉に、真柴は驚いていた。何故かは分からない。
「いや、こっちこそ。頭撫でられるなんて、子供っぽいもんな。ごめん」
真柴の言葉に、小柳は心の中で泣いた。なんで、真柴が謝るんだ。こっちが悪いんだよ。優しい真柴。大好きな真柴。もう、真柴を好きになったりしない。安心して。これで、普通の友達でいれるから。
小柳は、腹をくくっていた。もう、真柴を好きな気持ちは忘れる。友達のままでいる。これ以上の関係は、望まない。望んじゃいけないから。
クリスマスイヴがやってきた。真柴には彼女がいないから、イヴは小柳とデパートを回る約束だった。
服を見て、ジャンクフードを食べて、ゲームセンターで遊んで、冬アイスを食べて。とにかく、楽しかった。
ふと、小柳の頭に「デートみたい」という言葉が浮かぶが、すぐの抹消する。考えちゃだめだ。デパートの裏の公園で、サーティーOンアイスを頬張っている真柴は、甘いもの好き。少し、可愛いと思ったが、また抹消。そんなことの繰り返しだった。
「小柳って、彼女いねえの?」
「え?いないよ、そんなの」
「ふーん」
真柴は全然色恋の話をしない。クラスで、男子の恋話が始まっても、いつも抜けていた。だから、こんなことを訊くのは初めてだ。
「じゃあ、好きな子は?」
心臓がドクンとなる。顔に、動揺しているのが出ていないだろうか。
「いないよ」
「…ふーん」
少し間があったのは、気のせいだろうか。
「じゃあ、好きなタイプは?」
「なんか今日そういう質問多くない?いつも、そういう話しないのに」
「答えて」
小柳が必死に話を終わらせようとしているが、真柴は何やら真剣だった。
「…とくにない」
「なんか答えて」
「うっ、じゃあ、黒髪…かな」
「顔は?身長は?メガネは?性格は?肉食?草食?髪の長さは?」
「え?多い…」
なんとなく、真柴が怒ってるように見えてきた。そういえば、今日一日少し不機嫌だった気がする。なにか、悩んでいるのだろうか。
「…ごめん。帰ろうか」
苦しそうな顔で、真柴はそう言って、ベンチから立ち上がった。
帰りの電車が気まずかった。お互い、何も話さなかった。帰り道では、真柴に送ってもらった。「いいよ」と言ったが逆に「遠慮すんな」と返された。
「…小柳さあ」
「う、うん、何?」
「…本当に好きな奴いねえの?」
また心臓が鳴る。まさか、バレたりしていないだろうか。いや、そんな訳…。
「い、いないよ」少し声が震えた。
真柴が立ち止まる。最初は俯いていたが、すぐに顔を上げた。ものすっごく怒ったいた。
「まし―」
「いるだろ!」
「へ?」
「いるだろうが、好きな奴!お前、一時おかしかったし、俺のこと避けたし、一緒に帰らなかったし…。いるならなんで俺に隠すんだよ!彼女とかいるんじゃねえの!?」
「ま、真柴?どうしたの、そんな急に―」
「急じゃねえよ!自分のこと全然話さないで、俺のことだけ振り回して!俺ばっかりお前のこと気にして…!」
真柴はおかしかった。いったい、どうしてこんなに怒っているのか、一体全体分からなかった。
「俺じゃ、ダメなのかよ…」
その言葉を理解した瞬間、心臓が止まった気がした。
「…それ、どういう意味?」
小柳が訊くと、真柴が少し顔を赤くした。
「い、いまのは!忘れろ!何にも言ってない!」
「違う!言った!今なんて言ったの!?」
「俺じゃ駄目なのかって言ったんだよ!!」
だめだ。ここで都合よく解釈したら、自分の気持ちがバレる。でも、もしかしたらこの真柴の言葉の真意は…。
「それって、俺の好きな人になりたいってこと?」
あ、訊き方間違えた。
「~~っ!そうだよ!悪かったか!」
少しずつ、小柳の温度が上昇していく。小柳の好きな人に、真柴はなりたい。小柳に好かれたい。それって…。
「それって、俺のことが好きってこと?」
「そうだってば!!」
小柳は、無意識に真柴を抱きしめた。これは、夢かもしれない。現実では、真柴は小柳のことをただの友達だと思っているのかもしれない。でも、せっかくこんないい夢を見たのだから、無駄にしたくない。
「俺も好き」
「…へ?」
「俺も真柴が好き。ずっとずっと、好きだった」
すると、抱きしめた真柴が泣く声がした。
そして、小柳の頬を温かいものが流れていった。
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