第4話 出会い

 尚一は目を開けると見覚えのない場所で身体には包帯がまかれた状態で眠り込んでおり、尚一は疑問に思いながら周囲を見渡す。


 そこには焚き火を焚いている長い金髪を束ね、黒い中折帽にサングラスで顔を隠し両袖が無くなっていたボロボロの黒いダブルライダースを着用していた屈強な体をした男性と三人の外国人のような美少女がいた。


 「目は覚めたか?」


 金髪の男性は尚一に尋ねる。


 「……僕は、ここは一体?」


 尚一が奇襲された森ではなく、そこは世紀末などでよく見かける廃墟ばかりの荒野で、どうして自分がここにいるのか?尚一は生きていることを証明するために自分の頬をつねる。


 「った………!」


 「これは夢じゃぁないぜ。君はあの森で出血多量になっているのをたまたまリサが見つけてくれたんだ」


 「最近おかしな現象がこの世界の各地で行われていまして、神様の話によると何者かがこの世界に数十人もの人間を召喚したとかなんとかって……あなたもそのうちの一人なんですよね?」


 リサと名乗る少女は次々と尚一に説明をし、誰にも日本から来たことを話してもいないのに尚一はどうして知っているのか疑問に思う。


 「『どうしてそれを知っているのか?』と疑問に思っているのかもしれませんがあなたの心を読ませていただきました」


 心を読んだと聞いた尚一はリサという少女がすぐに異世界の美少女であることが分かり警戒した。


 「そこまで警戒しなくてもいいよ、俺は神様の頼みでこの辺を調査しているだけで君を奴隷にして売り飛ばしたりこき使ったりはしない。それだけは約束するよ」


 金髪の男性はそう言いながら煙草を口に咥えるとリサは「まだ未成年ですからメッ、ですよ!」と注意を促す。


 「それは日本にいた時の話しでこの世界には未成年という概念がないんだからその辺は勘弁してもらいたい……」


 「ジョセフ様はいつもそうやって煙草を吸おうとしていますけど本当に辞めた方がいいですよ?」


 「ジョセフって……」


 尚一はジョセフと聞いた瞬間何かを思い出したようだ。


 「ジョセフって……あのジョセフ・ジョーンズですか?」


 「……んっ、そうだけど。俺は確かにジョセフ・ジョーンズだが君も心が読めるのか?」


 ジョセフは天然ボケをしているのかわざとなのか首を傾げ、尚一に尋ねる。


 「読めません、しかし……ジョセフ・ジョーンズと言えば僕の好きな小説の主人公で確か、ワトソン王国の王女と婚約をしている描写もありましたが王女様の名前も確か隣にいるリサさんと同じ名前でした」


 尚一は日本にいた頃に読んでいた小説の内容を思い出し、ジョセフとリサがワトソン王国から来たことを察する。


 「私達も自己紹介しとかないとね、私はジンジャー。ジョセフの二番目の奥さんよ」


 ジンジャーと名乗ったオレンジ色の髪のツインテールの少女はアストリーとのように引き締まった体には似合わない程にグラマラスで、身長も女性の中では高い方だ。


 「ケイトって言います。一応ジョセフさんと結婚しています」


 「僕は尚一、長瀬尚一と言います」


 茶髪のサイドテールのケイトという少女はモジモジとしながら尚一に自己紹介を済ませる。


 ケイトはジョセフと同い年でありながらも身長はリサと同じくらいで、傍から見れば小学校を卒業したばかりの中学生に見える容姿だが胸の大きさはCカップはあると尚一は推定した。


 「そしてジョセフさん、どうして僕を助けたんです?」


 ふと、疑問に思った尚一はジョセフに問う。どこにでもいそうなありふれた冴えない高校生一人を救う理由を知りたかったのだ。


 たったそれだけの単純な理由、ジョセフは渋った表情で声を唸らせる。


 「助けた理由……特にはないよ。ただ、普通の人間をそのまま森の中で放置してるのはいい気分にはなれないだけださ。リサからはなんとなく聞いているけど君の口から直接確認したい。何故あそこで血だらけになって倒れていたんだい?」


 ジョセフは助けた理由を答え、尚一は唖然とした表情で口をポカーンと開けていた。そして、ジョセフは血相を変えて尚一に森に血だらけになって倒れてたのかを尋ねる。


 「それは……俺はクラスメイトや教師と一緒に集団転移したんです。召喚したのはセントルイス王国の国王でも教皇でもなくてこの世界を創造したマフディーって神様が召喚したみたいでクラスメイト達はギフトやユニークスキルを貰っているのに対して俺は日本にいた時と変わらず、ステータスも平凡だったからあの国の人間に……国王と王女の目論みで殺されかけたんだ……」


 「そう思って俺達はセントルイス王国に向かうのを辞めた。君を連れて行けば確実に人間同士の戦いは免れない。そのマフディーとか言う似非神えせがみを倒すためにも今は隠密行動をしなければいけないしな」


 尚一は似非神?と言った表情で驚き、ジョセフはマフディーを倒すことを目標にセントルイス王国へ向かうつもりだったのだがそのマフディーがいないと分かった以上向かう必要性が無くなったのだ。


 「それにさっき、ステータスとかギフト、ユニークスキルとか言っていたがどういうことなんだ?」


 「ジョセフさん達は持っていないんですか?プレートを……」


 「私達のいた国ではそのプレートって言うものはありません。尚一さんの持っているプレートって言うものを見せてもらっていいですか?」


 リサは尚一にアーティファクトでもあるステータスプレートを見せるよう頼む。


 尚一は自身のステータスをリサ達に公開し、ジョセフは興味津々にステータスプレートを見詰める。


 「そのプレートって某バトル漫画みたいに他人の戦闘能力を計測したりってできないの?」


 「できるよ?”計測”!」


 【ジョセフ・ジョーンズ】


 レベル:5


 年齢:18歳


 戦闘力:50


 体力:50


 魔力:50


 耐性:50


 知力:50


 筋力:50


 敏捷:50


 スキル:言語理解・覇王眼・覇王眼ZX・神魔眼


 魔法適正:光属性・闇属性・火属性


 尚一はジョセフのステータスを確認し、そのステータスの数値の低さに驚きを隠せずにいた。


 「俺のステータスって思ってたより低いんだな……まっ、今は力をコントロールしているからこんなものだろうけど」


 「ちょっと待って!覇王眼と神魔眼って……」


 尚一はステータスが低いことではなく、ジョセフが覇王眼や神魔眼と言った神話級の眼を開眼していることに驚いていたのだ。


 「神魔眼がどういうものかは分からないけど覇王眼ならなんとなく、セントルイス王国の騎士団長がその単語を使っていたけどそんなすごい眼を持っているってことはジョセフさんは相当な修羅場を潜り抜けてきたか生まれつきの能力ってことになるよね?」


 「ジョセフ様は確かに修羅場を潜り抜けてきました。覇王眼はまさにその証です。神魔眼は覇王眼を開眼した状態で神様の血液を体内に取り込んだことで開眼しています」


 「そのおかげで適性のなかった無属性魔法で転移するんじゃなくて神魔眼の能力による瞬間移動で神様の所に行って、そこからここに転移してもらったりと旅もだいぶ楽になったよ。神魔眼と覇王眼ZXは覇王眼や覇王眼零と違い失明リスクもないうえに魔力量の消費も減少したから光属性究極魔法”インドラ”を発動してもガス欠しないからその辺はゲームみたに改善されてるよ」


 リサはジョセフの代わりに尚一に説明をし、ジョセフは尚一に付け加えるように覇王眼零と神魔眼の能力を説明する。


 「セントルイス王国自体がチュードランド王国やホームズ王国よりも遠く世界地図に掲載されていない方面にあるから仕方ないよ。私もジョセフと出会う前は行商とかしてたけど世界地図にセントルイス王国のある大陸は発見されていなかったし」


 「それにしてもそのアーティファクトは凄いです!」


 ジンジャーは行商していた頃の地図を尚一に見せるもセントルイス王国のある大陸までは描かれておらず、ケイトはステータスプレートで自身のステータスを確認出来ることに関心を持っていた。


 尚一の異世界生活は絶望に満ち溢れるのかと思ったらジョセフ達に救われたことで尚一の心の中の闇が少し光が入り込んでいた。

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