第4話 フィルリオン・ガルディオン・ディスト



 王子の事は、フィル様と私は呼んでいる。


 公式の場ではフィルリオン様だが。


 日常で過ごしている時、私が「マスター」と呼ぶと「フィルと呼べと言っただろう」と言う。


 視線の先で、王子は果物やの店主に声をかけて、果実を絞ったジュースを購入している。


 きちんと小銭を払って。計算も間違っていないはず。


 その手つきはなれたものだ。


 彼は、よく市民にまぎれて行動しているので、そういった普通の人間の行動で困る事はない。


 常識知らずのお坊ちゃん、というわけではないのだ。


 一般市民にまぎれて行動するその癖を、悪癖だという人もいるが、私にとっては好ましい性質だと思っている。


「ササもいるか?」

「私は機械ですよ。マスター」

「だから、俺はフィルだって。知ってる。言ってみただけだろ」


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