21.それはデート?


「えぇ! じゃあ、図書委員の先輩とお祭り行くことになったの?」


 朝の登校中にさやかちゃんと昨日の話になった。


「そうなんだよ。お昼にたまたま会って急に誘われて、あれは心臓に悪い」

「その先輩って、よく寝てるって有名な人でしょ? 顔は見たことないけど、噂は聞いてるよ。陸部の先輩もたまに話してるくらい」


 眠り王子っていう名前が付いているくらいだもんなぁ。


「くぅちゃんはそんな人とデートかぁ。これは楽しみすぎる。尾行したい気持ちに駆られてる」


 尾行されてても緊張してるだろうから、絶対気が付かない自信がある。


「でも部活なんだろうなぁ。逐一報告してくれればいいよ」

「いや、それは出来ないでしょう」


 出来ないと言いつつ、めちゃくちゃ相談には乗ってほしい。それはもう分単位で。


「それで、デートには何着ていくの?」


 考えてなかった。


「そ、そうだよね。何着ていこう……待って、デートじゃないよ」


 男女が二人でお祭りはデートと言われ、余計に緊張してきた。


「どうしよう。制服でしか会ったことないから、全然考えてなかったよ」

「やっぱり浴衣じゃないかな。お祭りの王道」


 ちょっと気合入りすぎじゃないかと。


「うーん、歩きにくいし初めてにしては難しいか。よし、可愛いワンピースにしようよ」

「デートって意識してるみたいで恥ずかしいよ」


 私がそう言うとさやかちゃんは、それがいいとだけ言った。


 そして学校に着いたのであった。


 結局何にも決まっていないような。



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